2016 Fiscal Year Research-status Report
呼吸器疾患の個別化医療を実現可能にする吸入粉末剤のカスタムメイドデザイン
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16K21500
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
門田 和紀 大阪薬科大学, 薬学部, 講師(移行) (50709516)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 吸入粉末剤 / 数値シミュレーション / 噴霧乾燥法 / 個別化医療 / 複合粒子 / 中空粒子 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年増加する各種呼吸器疾患に対して、個別化医療推進を目指すため、各疾患および患者に応じたカスタムメイドの吸入粉末剤の粒子設計を目指している。 本年度は、数値シミュレーションによって、気管支内における空気の流れおよび気管支内での粒子沈着から、各疾患別に対して有効な場所に到達しやすい粒子物性について把握した。さらに、数値シミュレーションから得られた各気管支の適切な場所に到達しやすい理想的な粒子物性、特に粒子形態などについて制御した粒子を設計し、各疾患に応じた薬物を含む複合粒子の開発を行った。気管支喘息に対しては、モデル薬物としてトラニラストを使用し、局所的な炎症部に到達するために必要な粒子作製を、噴霧乾燥により行った。その際、当研究室で吸入剤の賦形剤として開発してきた高度分岐環状デキストリンを使用し、噴霧乾燥条件によって、様々な粒子形態に制御し、目的とする炎症部位への粒子到達を実現することが可能な粒子設計を行った。さらに、肺結核治療に対しては、肺深部への高い粒子到達性が求められることから、空気力学粒子径が小さくなるように低密度でかつ中空な粒子作製に成功した。この際モデル薬物として肺結核治療に用いられているリファンピシンとイソニアジドによる合剤の粒子設計にも適用することが可能であった。 一方で、気道内での吸入粉末剤の粒子沈着効率を高めることが、治療効果を十分に発揮するためには非常に重要である。そのためには、患者の吸入パターンの違いによる気道内での粒子沈着への影響を把握する必要がある。そこで、吸入速度や吸入動作を数値シミュレーションにより変化させ、気道内での粒子挙動や沈着に及ぼす影響について現在検討中である。特に、息止めが気道内での粒子沈着率を高める可能性があることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・気管支喘息患者に対して気管支部位に到達可能な粒子設計に成功した。 ・数値シミュレーションにおいて、気管支部位への粒子沈着の挙動を明らかとした。 ・喘息治療に用いられいてるリファンピシンとイソニアジドによる肺深部への到達性が高い合剤設計に成功した。 ・患者に対応した吸入パターンの違いによる気道内粒子挙動および沈着挙動について数値シミュレーションを用いて解析した。
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Strategy for Future Research Activity |
・疾患を持った患者の気管支での空気流れの違いや粒子挙動の違いについて解析する。 ・気管支喘息治療として用いられている他の薬剤を用いて、局所的に気管支部位に優先的に粒子が到達するような合剤による粒子設計を行う。 ・肺結核治療に対してもリファンピシンとピラジナミドによる合剤粒子設計を行う。 ・各疾患に応じて目的とする肺内部に粒子が効率的に到達するような吸入パターンや粒子物性についての解析を行う。
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Causes of Carryover |
学会参加はおおむね想定通りであったが、この費用が当初参加を予定していた学会よりも近隣であったことによる。また、共同研究先への出張回数も本年度は当初予定より少なかったためである。また、投稿論文については想定通りであったものの、英文校閲費が他の研究室費で賄えたことが挙げられる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度は、CT画像による肺気管支作製に要する委託費、国際学会参加、学会参加、論文校閲費などを要するため、当初要求額および残額を使用する予定である。
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