2017 Fiscal Year Research-status Report
本態性振戦の病態メカニズム解析と新たな治療薬ターゲットの解明
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16K21501
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
清水 佐紀 大阪薬科大学, 薬学部, 助教 (00630815)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 本態性振戦 / 下オリーブ核 / β受容体遮断薬 / 脳内モノアミン / Fosタンパク |
Outline of Annual Research Achievements |
成人で頻繁に見られる本態性振戦は、根本的治療法が無いことから、有効性の高い新規治療薬の開発が望まれている。本研究では、我々が新たに樹立した自然発症性の本態性振戦モデルTremorラットを用いて、本態性振戦の神経制御機構を明らかにし、現在の対照療法治療薬であるβ受容体遮断薬の振戦抑制メカニズムを解明するとともに、新規治療法を提案することを目的とする。
本年度は、本態性振戦モデルTremorラットを用いて、β受容体遮断薬の作用解析や脳内モノアミン含量の定量を行うとともに、Tremorラットの振戦と動作時振戦を示すnicotine誘発振戦との類似性評価などを実施した。 ・Propranololの作用解析:Tremorラットの振戦発現により誘発される脳内Fosタンパクの発現上昇に対して、β遮断薬propranololの影響を評価した結果、Tremorラットの下オリーブ核におけるFos発現の上昇に対して、propranololは部位特異的な抑制作用を示した。 ・Tremorラットの脳内モノアミン含量の定量解析:Tremorラットと非振戦性WTCラット(HCN1チャネル変異)の脳内モノアミン含量の定量を行った結果、Tremorラットでは、複数の脳部位でdopamine、serotonin、noradrenalineの含量が低下傾向にあること、dopamineおよびserotoninの代謝回転が上昇していることが明らかとなった。 ・Nicotine誘発振戦との類似性評価:動作時振戦であるnicotine誘発振戦に対して、各種受容体作用薬の影響を振戦持続時間および振戦強度を指標として評価した結果、β遮断薬や5-HT1A遮断薬によりnicotine誘発振戦の発現は抑制され、Tremorラットに対する薬物反応との類似性が確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・当初計画していたTremorラットの振戦発現に対するβ受容体遮断薬の脳内作用部位探索を実施し、作用部位を限定することができた。 ・Tremorラットの脳内モノアミン含量の解析では、TremorラットおよびWTCラットのいずれも全脳9部位におけるdopamineおよびserotoninとそれら代謝体、noradrenalineの定量・解析を本年度ですべて終了することができた。 ・Tremorラットの脳内モノアミン解析の結果を踏まえて、aspartoacylase欠損ラットにおいても同様に、脳内モノアミン含量の定量を次年度に実施する計画を立てた。 ・Tremorラットの振戦と同じく、動作時振戦を示すnicotine誘発振戦との薬物反応性における比較を行い、両者に類似性を確認することができた。 ・京都大学医学部実験動物施設との共同研究により、aspartoacylaseおよびHCN1チャネル欠損ラットを作出した。次年度は、これら遺伝子欠損ラットを用いて、振戦感受性の評価などを行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
・β受容体遮断薬の振戦抑制作用のメカニズム解析を継続して実施する。 ・Aspartoacylase欠損ラットの脳内モノアミン含量の定量解析:Tremorラットと同様に、aspartoacylase欠損ラットとF344ラット(対照)の脳内モノアミン含量の定量を行う。各個体の全脳サンプルは全脳9部位について既に調製済みであり、次年度はこれら各脳サンプルをHPLC法を用いて定量・解析する。解析結果は本年度までに得られたTremorラットの結果とも比較する。 ・Aspartoacylase欠損ラットおよびHCN1チャネル欠損ラットを用いた振戦感受性評価:これら各遺伝子欠損ラットに対して、各種振戦誘発剤(Harmaline, oxotremorineなど)を投与し、振戦発現における感受性を正常動物と比較し、aspartoacylaseおよびHCN1チャネルの振戦発現に対する影響を評価する。 ・研究全体の総括:研究の進捗は概ね予定通りであり、最終年度は研究成果の全体総括(本態性振戦の発現メカニズムやその調節機序、新たな治療ターゲットの提案など)を行い、得られた成果を国内外に発信していく。
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Causes of Carryover |
(理由) 本年度使用額の端数残金である。 (使用計画) 端数残金のため、次年度使用分と合わせて使用する。
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