2018 Fiscal Year Research-status Report
個別の学習支援における自己制御メカニズムの解明-解釈レベル理論を用いた検討-
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16K21518
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Research Institution | Osaka Electro-Communication University |
Principal Investigator |
寺田 未来 大阪電気通信大学, 共通教育機構, 講師 (50733789)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 動機づけ / 有能感 / 限定条件 |
Outline of Annual Research Achievements |
大学初年次生に対する学習支援を効果的なものにするためには何が必要なのだろうか。学生の自己学習力(≒自己制御)を高めていくためには,支援者が学生のニーズ,特質,理解度を的確に見極めることが必要である。なかでも支援者(教員,TA,チューターなど)と学生との1対1による学習支援において,解釈レベル理論に関する研究知見をもとに,学生と支援者の解釈レベルがいかに相互作用し合って,学生の自己制御に影響するのか,このメカニズムを明らかにすることが本研究の目的である。 これまで学生の解釈レベルの高さに応じ,教え手の介入のあり方を調整させることの有用性を示してきた。本年度は,学生の個人差によっても教え手の介入のあり方を調整する必要があるとの仮説をたて,検証した。学生の特質として,課題に対しどれくらい自信をもっているか,どのような動機づけをもつかに着目し,これらに応じた解釈レベルの調整が自己制御にいかなる影響を及ぼすかを検討した。 シナリオ実験の結果,有能感の高い学生に対しては高レベル解釈を促すことの有用性が認められた一方,有能感の低い学生においては低次の解釈による効用が認められた。 解釈レベルが自己制御に及ぼす効用は個人差により異なることが示されたことは実践的な視座を与える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年度ごとの計画について,順番が前後したが,当初予定したいた調査実験は実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)他者による解釈レベルの調整(低レベルvs. 高レベル)が2者間の認知の不一致(学習志向vs.解決志向)を解消させ,個人の自己制御を促すメカニズムの検討,(2)有能感および動機づけに応じた解釈レベルの調整が,自己制御に及ぼす影響とそのメカニズムの検討,(3)これらの知見をふまえた実践的アプローチ,の3点に加えて対人感受性や親密さなどの個人差との関連も含め,これまで効果的な学習支援の研究を遂行した。しかし,大学初年次生への学習支援のあり方は,対象となるフィールドにより異なる。今後は,学生の特質としてテスト観や失敗観を取り入れ,それらが学習支援,とりわけライティング支援にどのような影響を及ぼすのかを検討する必要性がある。今後は,ライティング支援にターゲットを絞り,学生の特質に応じた支援のあり方を検証していく。
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Causes of Carryover |
旅費については,すべてを学内研究費で支給することができた点,また研究におけるWebでの調査について,予算が想定範囲より安価であった点が挙げられる。 次年度使用額の使用計画についてWebを用いた調査,実験を複数回引き続き実施予定である。
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Research Products
(4 results)