2017 Fiscal Year Research-status Report
外傷性ストレスの深刻化・慢性化の予防を目指した心理学的プログラムの開発
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16K21520
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
大澤 香織 甲南大学, 文学部, 准教授 (30462790)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 心理教育 / トラウマの記憶想起 / トラウマティック・ストレス / ストレスマネジメント / 認知行動療法 / 対処可能感 / セルフ・エフィカシー |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究1】当該年度では,前年度に研究協力に同意し,プログラムへの参加と調査回答に協力した一般大学生を対象に,フォローアップ調査を実施した。実施した調査全てに協力し,回答に不備のなかった介入群25名,統制群(調査回答にのみ協力)8名のデータを分析した結果,介入群は実施1ヵ月後に統制群よりもトラウマの記憶想起に対する対処可能感(セルフ・エフィカシー)が高まったが,18ヵ月後には統制群との差が認められなかった。プログラムの短期的効果は認められたものの,時間経過にしたがって効果が持続しにくくなることが考えられた。トラウマとなる出来事がもたらす心理的危機に備えて,効果に持続性のあるプログラムの提供が課題となることが示唆された。 この結果を受ける前から,当該年度では前年度までの研究成果や進行状況を基に実施方法等を再検討し,プログラムの効果検証を試みた。主な改善点は,(1)プログラムの学習効果を向上・持続するため,アクティブ・ラーニング等を取り入れた点,(2)参加者募集の現状から,効果測定のみに協力を求める統制群の配置に切り替えた点,(3)国外の研究者らの意見を基に,個人の態度を測定する指標を加えた点であった。当該年度では,これらを取り入れたプログラムを大学生対象に実施した。次年度にフォローアップ調査を継続し,プログラムの中長期的効果を検証する。 【研究2】在外研究期間を終え,当該年度に入ってから改めて学内組織(地域連携センター等)に研究協力の要請を行ったが,スタッフの配置換え等もあり当該年度での共催実施は困難と判断された。次年度に学内組織との共催で研究を進めていくこととなった。それを受けて,当該年度では研究代表者の学外研修等の機会を活用し,研究2のプロトタイプを試行した。受講後のアンケートから,内容の難しさが示唆されたため,次年度の公開講座に向けてプログラムの再検討を継続していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究2が当初の計画通りに進んでいないことが主な理由である。前年度では,研究代表者の在外研究(2016年9月~2017年3月)終了後に,学内組織との共催で研究2の計画・実施を予定していた。しかし,当該年度に入って学内組織での対応スタッフが変わったこと,当該年度に学外で実施するためには,研究代表者が出国していた時期に詳細な計画立案と実施の確定が必要であったと判明した(しかし,実質,在外研究期間中にその交渉自体行うことが不可能であった)ことから,計画を練り直し,次年度以降に学内組織と共催で研究2を実践することとなった。このことを受けて,当該年度では研究代表者の学外研修等の機会を利用して研究2のプロトタイプを試行し,一般向けに適した内容を再考することができた。これは,次年度に本研究課題を円滑に進めていくために,有意義な機会であったと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1については,プログラムの効果持続や統制群への情報提供を考慮し,プログラムの内容を冊子体にして配布する対応を具体的に検討する。また,研究協力者のフォローアップ調査への参加率を上げるために,これまでの実施状況から課題を洗い出し,次年度のフォローアップに向けて対策をはかる。 次年度に学内組織と共催で研究2を実践し,その状況を見ながら,プログラムの遠隔実施の必要性や実現可能性を探る。前年度に研究推進の方策の1つとして挙げたe-learningシステム,オンラインによる介入について,当該年度で専門家等に相談し,検討を重ねた。その結果,これらの実現に向けて優先すべき事項が見えてきたため,現時点では保留となっている。前述した冊子体の配布の件も含めて,この点について継続検討していきたい。また,現時点において研究2では統制群の配置が非常に困難であると考えられるため,効果検証の方法の見直しもはかる。
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Causes of Carryover |
学外での研究実施(主に研究2)が当初の計画通りに進んでおらず,研究1については学内の講義を通じて実施可能であったことから,研究代表者の交通費・宿泊費,研究協力者への謝金,フォローアップ調査に要する郵送代,学外向けの広告掲載費にかかる支出がなかった。e-learningシステムやオンラインによる介入といった遠隔実施に研究費をあてる計画もあったが,専門家等との相談・検討の結果,一時保留となったため,それにかかる支出もなかった。これらを理由に,次年度使用額が発生したと考えられる。 発生した次年度使用額は,翌年度分として請求した助成金とあわせて以下のものに使用することを計画している。まず,次年度では学内組織と共催で学外向けに研究を進める予定であるため,その際にかかる研究協力者へのフォローアップ調査の郵送代や謝礼,資料印刷費などに使用する。学外向けに実施するにあたり,研究協力者との連絡窓口やプログラム実施補助を要するため,事務アルバイトにも使用する。研究1のプログラムの内容を冊子体にする作業を進めるべく,専門業者への委託費や印刷製本費,配布のための郵送代などにも充てることを計画している。
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Research Products
(3 results)