2018 Fiscal Year Research-status Report
外傷性ストレスの深刻化・慢性化の予防を目指した心理学的プログラムの開発
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16K21520
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Research Institution | Konan University |
Principal Investigator |
大澤 香織 甲南大学, 文学部, 准教授 (30462790)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 心理教育 / トラウマ記憶の想起 / トラウマティック・ストレス / ストレスマネジメント / 認知行動療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
【研究1】当該年度では,前年度に「外傷性ストレス予防プログラム」への参加と調査回答に協力した一般大学生を対象に,フォローアップ調査を実施した。全プログラムに参加した介入群32名,調査回答のみに協力した統制群15名のデータを分析した結果,介入群のトラウマ記憶の想起に対するネガティブな感情や対処可能感(セルフ・エフィカシー)はプログラム実施後に低減し,実施1年後もその効果が持続していたが,統制群との差が認められなかった。身近なトラウマ体験者に対するセルフ・エフィカシーは,実施1ヵ月後の時点で介入群の方が統制群よりも高く,トラウマを体験したと想定した場合の自己スティグマも統制群より弱まっていたが,実施1年後には統制群との差がみられなくなった。援助要請態度(心理的支援を求めることに対する個人の態度)のみ,介入群の方が統制群よりもポジティブになり,それは実施1年後にも維持されていた。前年度までの研究結果と比較すると,当該プログラムの効果がより高く認められるようになったものの,効果の持続性等にまだ課題があることが示唆された。これまでの研究成果を学術論文等にまとめ,課題を整理し,より効果の高いプログラムの構築とその検証について考察していく必要がある。 【研究2】大学生に加え,研究代表者の所属機関との共催で行われた公開講座の受講者にも研究協力を依頼し,一般市民向けの「外傷性ストレス支援者講習プログラム」を施行した。施行にあたり,本研究の趣旨等について十分に説明し,研究協力に同意する者には同意書への署名を求めた。プログラムはまず,一般向けの公開講座(1回90分,計3回)で実施され,公開講座終了後に大学生(Waiting List Control群)を対象に再度,同様に実施された。現在,公開講座受講者42名,大学生52名のフォローアップ調査を継続中であり,2019年度内に完了する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の研究実施状況報告でも述べたとおり,研究2が当初の予定通りに進んでいないことが主な理由である。しかし,研究助成期間の延長が認められたおかげで,研究2のフォローアップ調査の継続実施が可能となり,そのデータは着々と集約できている。2019年度中にフォローアップ調査を完了し,研究2における心理学的プログラムの中長期的効果の検証が可能となる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
研究1については,その成果を研究論文等にまとめて考察を深めつつ,トラウマの記憶想起に焦点をあてた「外傷性ストレス予防プログラム」の改良点や研究成果を社会に還元するための効果的な方法について検討を続ける。 研究2については,フォローアップ調査を継続実施し,データを集計・分析することで,研究2にて試みた「外傷性ストレス支援者講習プログラム」の効果を総合的に検証する。
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Causes of Carryover |
理由は主に,研究代表者の在外研究,および予定になかった学科主任就任等により,研究を当初の計画通りに進めることが難しく,研究2にて計画していたプログラムの中長期的効果を検証するためのフォローアップ調査が最終年度までに完了できなかったためである。研究助成期間の延長が認められたため,計画通りにフォローアップ調査を継続実施し,本研究課題の成果をまとめて公表する必要がある。そのため,生じた次年度使用額は,フォローアップ調査の実施に必要な経費(調査用紙の印刷にかかる費用,郵送費など)やデータ整理・解析等に必要な人件費・謝金,学術論文等での研究成果公表のための費用に充てる。
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