2016 Fiscal Year Research-status Report
生活分析的カウンセリング法を用いた大学生の抑うつ軽減への心理教育プログラムの開発
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16K21523
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Research Institution | Kobe Shinwa Women's University |
Principal Investigator |
松本 麻友子 神戸親和女子大学, 発達教育学部, 講師 (00771693)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 抑うつ / 生活分析的カウンセリング法 / 心理教育 / 反すう |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、生活分析的カウンセリング法(Life Analytic Counseling; LAC法)を用いて、大学の授業で実施可能な抑うつ軽減プログラムを開発し、学生支援の一手法として提案することである。 本年度は、まず、抑うつ軽減プログラムを開発するために、LAC法に関する実証研究の成果や他の手法を用いた抑うつの予防・軽減に関する研究成果を踏まえ、集団で実施する際の留意点を考慮し、プログラム案を作成した。 続いて、作成したプログラム案を複数の大学の授業にて心理教育の一環として試行した。心理学関係の授業を受講する大学生を対象に介入群と統制群を設定し、介入群では学生自身の目標を重要性・実現可能性等から数値化し表にまとめるLAC表の作成(月1回計2回)と各LAC表作成後、生活行動の自己分析・評価と目標達成の振り返り(週1回計6回)から構成されるプログラムを実施した。 プログラムの効果を検証するために、プログラム実施前、実施中、実施後に抑うつ、反すうや自律性欲求等の個人特性、適応指標を含む質問紙調査を行なったところ、統制群では時間経過とともに抑うつ得点が増加するのに対し、介入群では調査時期による抑うつ得点に有意な差はなく、統制群に比べてプログラム実施後の抑うつ得点が有意に低いことが示された。また、この効果は抑うつを持続させる反すうが高い個人においても得られたことから、本プログラム案は大学生の抑うつの悪化を抑える効果があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画は、大学生を対象にLAC法を用いた抑うつ軽減プログラム案を開発することであった。 研究計画に基づき、LAC法の実証研究や抑うつの予防・軽減に関する研究レビューによる情報収集の結果を踏まえ、大学の授業で実施可能なプログラム案を作成した。続いて大学の大規模授業において抑うつ軽減プログラムを試験的に実施した。プログラムの効果を実証的に検討するため、プログラム実施前後および実施期間中に質問紙調査を行ったところ、本プログラムは大学生の抑うつの悪化を抑える効果があることが示唆された。 また、小規模授業や中規模授業を対象に実施したLAC法の先行研究についても成果をまとめ、国際学会等で発表できたことから、概ね当初の計画通り進行しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に開発したプログラムの効果を詳細に検討し、プログラムを洗練させることが課題である。 まず、本年度に実施した試験的プログラムに関する質問紙調査や振り返りシートの自由記述の結果について反すうや自律性欲求等の要因に着目し、抑うつ軽減効果の個人差を検討する。 続いて、授業形式で大学生にアプローチでき、かつ大学生が取り組みやすいプログラムにするため、介入群に日常生活でどの程度目標を意識した行動をしていたか、プログラムの抵抗感や難易度等について面接調査を行う。さらに、国内で抑うつ予防・軽減の取り組みを行っている研究者にプログラムの実施回数や介入方法、実施後のフォローおよび配慮すべき点等について助言を求める。これらの結果をもとに介入方法や内容を精査し、プログラムを洗練させる。
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