2016 Fiscal Year Research-status Report
東アジア水域の湿地保全へ向けた面源汚染政策の応用と実装
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16K21545
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
澤田 英司 九州産業大学, 経済学部, 講師 (70458925)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 面源汚染 / ラムサール条約 / 湿地保全 / 移動性野生動物保全 |
Outline of Annual Research Achievements |
調査研究については,国内のラムサール条約登録湿地では,沖縄県の漫湖と佐賀県の鹿島干潟を,海外のラムサール条約登録湿地では,上海市の崇明島東灘鳥類国立保護区と浙江省杭州市の西渓湿地を訪問し,情報収集および担当者・関係者からラムサール条約登録までの経緯と登録後の保全活動について聞き取りを行った。同時期に登録された湿地でも,必ずしも登録へ向けて連携を図っていたわけではなく,登録湿地ごとに大きく登録の経緯は異なっていた。一方で,早期に登録された湿地では,登録後の保全活動の取り組みに大きく開きがあり,地域によっては住民や自治体の関心の低下が観察された。登録後の持続的な保全活動と因果関係のある要因を抽出する為には,登録へ向けた取り組みについて次年度以降も情報収集・聞き取り調査を継続する必要がある。 理論研究については,汚染主体を単体でなく,任意のペアの間で相対評価するトーナメント・アプローチから,汚染主体の数に依存せず汚染量の最適制御が可能となる政策設計に取り組んだ。本年度は,汚染主体が2主体の場合と3主体の場合の特殊ケースに分析を限定し,2主体の場合はペアを相対評価することで,3主体の場合は,ペアから漏れた主体に実現した環境被害の支払いを求めることで,汚染主体に適切な汚染削減のインセティヴを与えることができることを明らかにした。この結果によって,当初計画していたように,代表的な面源政策であるH&S型(環境被害型)とH&R型(自己申告型)の二つから,ある地域にとって比較的適切な政策となる一方の選択を考えるのではなく,二つの政策を融合させることで地域の特性に依存しない汎用的な政策を実現できる可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
直近の登録湿地以外では役所等の担当者がすでに部署を異動しているなどの理由で,ラムサール条約登録へ向けた登録当時の取り組みや,登録時の状況について計画通りに情報収集を進めることが難しかったため,調査対象地域の見直しが必要となった。
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Strategy for Future Research Activity |
調査研究については,計画では,国内のラムサール条約登録湿地として沖縄周辺の登録湿地だけを調査対象としていたが,登録が新しい登録湿地,登録後の保全活動が精力的に行われている登録湿地についても調査対象とし,登録湿地間での登録へ向けた取り組みや登録時の状況についての違いに着目しながら情報収集を行う。また,新たに研究協力者として漫湖水鳥湿地センターの富田宏氏に加わっていただき,調査にご同行いただくことで,申請者に不足する専門的知識を補う。海外調査については,国内調査で得た足がかりを起点として,平成28年度に計画通り調査を進めることができなかった調査対象地域の調査を進める。 理論研究については,汚染主体のペアを相対評価する政策を,まず,汚染主体数について一般化した上で同様の結果が得られることを確認し,その後,予算バランスや提携阻止といった効率性以外の重要な性質について順に確認する。調査研究の進展に合わせて,関数系を特定化し,調査で得られた各ラムサール条約登録湿地の特性をモデルに反映させることで,考案された政策の現実への実装についても考察を進める。平成29年度中に,国際学会・国内学会で成果の中間報告を行い,計画期間での研究遂行へ向けて研究計画を再検討する。
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Causes of Carryover |
登録当時の担当者の異動などの理由により,調査予定としていたラムサール条約登録湿地の調査を進めることができなかった。また,海外の登録湿地は,国内調査について一定の進捗が見られたあとに,国内の担当者・関係者の協力のもとで進める予定であったため,こちらも計画していた調査を終えることができなかった。そのため,調査のために計上していた旅費が次年度に繰り越されることになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
新たに調査対象に加わった,登録が新しい登録湿地,登録後の保全活動が勢力的な登録湿地への調査旅費として繰り越し分を使用する。
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