2022 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of Dynamic Process of Cooperation between Local Govenments and Corperate Social Responsibility (CSR) in Development Contexts
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16K21549
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
石井 梨紗子 神奈川大学, 法学部, 准教授 (00596851)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 地方行政 / 協働 / CSR / 開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
国際開発における企業の役割に注目が高まり、開発とビジネスに関する研究が盛んに行われるようになって久しいが、行政学の観点から見ると、これらの研究には本来的に最貧困層への社会福祉サービスの提供者であるはずの行政機関の役割という視点が極めて希薄である。このため本研究は、途上国における地方行政組織と、企業またはそれを母体としたCSR関連組織の協働関係を動態的に分析することで、行政学の観点から企業が国際開発に果たし得る役割を考察することを目的として開始された。 2019年度に実施した初回の現地調査では、企業側が求める透明性や効率性を兼ね備えた適切な協働相手の選定は容易ではなく、このため企業は行政能力強化支援に積極的に関わることで協働相手の創出に努めており、地方行政に対して対等というよりは指導的役割を果たしている様が浮き彫りにされた。 最終年度の2022年度には二度目の現地調査を予定していたが、現地の感染状況から対面調査は断念せざるを得ず、代わりにZoomによるインタビュー調査を実施した。この調査は、コロナという緊急事態下で企業と地方行政の協働がどのように行われたのかという、当初の研究計画では想定されなかったテーマを含めた形で実施することができた。初回の調査では、フィリピンのCSR事業がチャリティ的要素を強く持つことが確認されていたが、今回の調査では、企業が緊急事態下のサービス提供事業を進める中で、改めて、CSR事業と本業のビジネスとの関連性を問うようになって来ていることも明らかになった。 開発とビジネスに関する研究の中で独創的なアプローチを取った本研究の結果は、行政支援を主体としている開発援助の現場にも多くの示唆を含んでいる。また研究実施期間が再三延長された結果、企業=地方行政の協働について長期的な変化を観察することができた点も、本研究にとって大きな収穫であった。
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