2016 Fiscal Year Research-status Report
AMPキナーゼ活性が不活動誘発性骨格筋インスリン抵抗性に及ぼす影響
Project/Area Number |
16K21572
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Research Institution | Nagaoka National College of Technology |
Principal Investigator |
河本 絵美 長岡工業高等専門学校, 物質工学科, 准教授 (40634514)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 不活動 / AMPキナーゼ / 骨格筋 / インスリン抵抗性 |
Outline of Annual Research Achievements |
身体不活動は骨格筋にインスリン抵抗性を引き起こし、2型糖尿病の発症リスクを高める。しかし、その分子機序の解明には至っていない。今年度は、不活動が細胞内エネルギーセンサーとして知られるAMP依存性プロテインキナーゼ(AMPキナーゼ)の不活性化を介して筋にインスリン抵抗性を引き起こす可能性について検討した。なお、AMPキナーゼの構造はα、β、γの三量体であり、触媒活性を示すαサブユニットにはα1およびα2サブユニットが存在する。このことから、AMPキナーゼ活性の指標として、α1サブユニットのみに存在する485番目のセリン残基のリン酸化部位(Ser485)、およびα1とα2の両方のサブユニットに存在する172番目のスレオニン残基のリン酸化部位(Thr172)に着目して測定を行った。 ラットの片側後肢をギプスで底屈固定し、24時間後のAMPキナーゼリン酸化レベルを測定した。ギプス固定開始から24時間後、ギプス固定側のヒラメ筋におけるAMPキナーゼのThr172のリン酸化レベル、ATPおよびCrPは、対側と比較して変化はなかった。一方、AMPキナーゼのSer485のリン酸化レベルは有意に減少した。また、AMPキナーゼの基質であるACCリン酸化レベルの減少も確認した。AMPキナーゼのSer485残基のリン酸化はα1サブユニット特有である。したがって、ギプス固定24時間後の結果から、不活動はα2サブユニットではなく、α1サブユニットのAMPキナーゼ活性を低下させる可能性が示唆される。今後は、ギプス固定6時間後にもインスリン抵抗性が生じることから、この時の活性化状態についても詳細に検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、不活動がAMPキナーゼの不活性化を介して筋にインスリン抵抗性を引き起こす可能性について、ラットの片側ギプス固定モデルを用いて検討した。ギプス固定開始から24時間後、AMPキナーゼのα1サブユニットに特有のSer485残基のリン酸化レベルが減少していた。しかし、ギプス固定6時間後の結果について測定不十分な部分が一部あるので、それについて検討を行い、24時間の結果とともに評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
ギプス固定開始から6時間後のAMPキナーゼ(Ser485)リン酸化レベルを測定する。また、AMPキナーゼの他のリン酸化部位についても検討を行う。 さらに、次年度の課題である「食品素材の摂取による不活動誘発性骨格筋インスリン抵抗性の防止法」について検討を始める。これについては、先行実験において、AMPキナーゼの薬理的活性化剤であるAICARを投与すると、その後の不活動によって生じるはずのインスリン抵抗性が防止できるとの結果を得ている。したがって、今後は、AMPキナーゼを活性化するとの報告を有する植物由来ポリフェノールのルチンに着目し、ルチン摂取が不活動筋のインスリン抵抗性を防止できるか検討を行う。
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