2017 Fiscal Year Research-status Report
音波共鳴管実験に基づく混合状態の蒸発係数測定法の開発と実験式の確立
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16K21576
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
中村 篤人 奈良工業高等専門学校, 電子制御工学科, 講師 (80619867)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 相変化 / 蒸発係数 / 凝縮係数 / 音波 / 共鳴管 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,申請者が開発した共鳴音波を用いた蒸発係数測定法を基盤として,混合状態に対応した蒸発係数測定法の開発,並びに蒸発係数を高精度に求めるための実験式を構築することを目的としている.蒸発係数は,分子気体力学の境界条件,気体論境界条件に含まれる未知パラメータであり,蒸発係数が決定されることにより,気体と液体の界面において,どれだけの質量,運動量,エネルギーが交換されるのか,正確に求めることが可能となる. 昨年度導入を行った,試料蒸気生成用の蒸気タンク,圧力計,および真空ポンプを用いて,従来,実験を開始する際にすでに構築する必要のあった試料液膜を,実験系を排気し,十分な真空状態に到達した後に,形成することが可能となった.併せて,試料液体を脱気するために圧力容器を導入したことから,試料蒸気,試料液体の実験系への導入経路を分離することが実現され,本研究の目的とする混合状態の実験系を実現する準備が整った.今年度は,昨年度に引き続き,改良した実験系を用いて,単一物質(試料物質には水を用いた)の蒸発係数測定に取り組んだ.これは,混合状態のもとで実験を行うためには,試料蒸気,および別の物質,それぞれの分圧を正確に制御することが必要であり,単一物質による測定を通して,試料蒸気の分圧を測定,制御できることを確認するためである.単一物質における測定結果を,実験系改良前に取得した実験結果と比較し,精度向上の確認を行った.この実験装置改良に関する評価結果は沖縄で開催された国際会議,第9回日韓熱流体工学会議(TFEC9),およびオーストリア,ウィーンで開催された第13回計算音響国際会議(ICTCA2017)において発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度までの取り組みにより,実験装置の改良が終了し,混合状態の測定に対応した実験系が出来上がった.この改良により,実験系の初期排気による到達圧力が大幅に改善するとともに,非凝縮性気体の影響等を定量的に評価することが可能となった.今年度は,昨年度の装置改良を受けて,単一物質を対象として蒸発係数測定に取り組み,実験精度向上の確認に取り組んでいるが,実験系の排気前に試料液膜を実験系に形成した場合と排気終了後に試料蒸気,試料液膜を実験系に導入,形成した場合とで,測定時に音波を蒸気,および試料液膜に発振した場合の挙動,結果が異なることから,この原因の特定,解消に取り組んでいる.本問題の解消ができ次第,混合状態の実験に取り組む予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
現在問題となっている,排気前から試料液膜を形成した場合,および排気後に試料液膜,試料蒸気を導入した場合の測定時の挙動の違いに関して,解決に向けて取り組む.現時点では平衡状態に到達する前に測定を開始していることが原因として考えられることから,排気終了後に試料液膜,試料蒸気を導入した後,平衡状態に到達したことを確認して,測定を行う. 問題が解決された後,混合気体の蒸発係数測定に取り組む.本研究では試料と混合気体(例えば水と水蒸気および空気)で満たされた,初期状態において気液平衡状態にある実験系を対象とする.この時,試料蒸気とその他の気体の混合比は試料蒸気の分圧から求める.蒸気中にランジュバン型振動子(音源)を設置し,振動子を一定周期,一定振幅で連続的に振動させる.音波によって生じた蒸発,凝縮発生による音圧の変化を液膜下に設置した受信器により測定する.測定した音圧値を分子気体力学に基づき導出した蒸発係数に対する音圧値(理論解)と比較し,蒸発係数を決定する. 次に実験式構築に関しては,蒸発係数の測定結果から実験式を構築するために,実験条件を同一に設定し,液膜の有無のみ変更した状態で実験を行う.この実験により,蒸発,凝縮による効果のみを抽出することが可能となる.液膜なし(固体壁)条件の結果を基準として,液膜あり条件の結果を整理し,液膜温度と蒸発,凝縮による音圧変化,のグラフを作成する.液膜温度,音圧変化のグラフに対して適切な関数でフィッティングを行い,実験式を構築する.
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Causes of Carryover |
(理由) ターボ分子ポンプの導入を検討していたが,単一物質の蒸発係数測定(実験装置改良による精度向上確認)において,当初想定していた結果と異なる結果が得られたことから,その原因特定と問題解消に優先して取り組んでいたため,ターボ分子ポンプについては当該年度における購入が困難となり,次年度使用額が生じた. (使用計画) 現在の装置の改良結果を評価した上で,更に実験系の真空度を向上させるためにターボ分子ポンプ導入に充当する予定である.
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Research Products
(3 results)