2016 Fiscal Year Research-status Report
PEFC用新規マルチシェル・コアカソード触媒合成法の確立
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16K21577
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
山田 裕久 奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (90469073)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | PEFC / ORR / nano particle / core shell catalyst / cathode |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請課題は、PEFC用新規マルチシェル・コアカソード触媒の合成法を確立し、その触媒活性と電気化学的な安定性について明らかにすることを目的とする。 具体的には、Auの化学的な安定性を最大限に活かすためにPtML/AuML/Mcore/Cマルチシェル・コアカソード触媒の合成法を確立する。PEFCはプロトン伝導性を有する酸性の電解質を用いるため基本的には耐酸性の強い貴金属が触媒材料として用いられている。酸性雰囲気でも安定なAuでコアとなる金属ナノ粒子を被覆し、その上にPtを修飾することで将来的にはコア金属に安価な遷移金属を用いることができるとかんがえられる。 平成28年度は、マルチレイヤーシェル構造を有するコアシェル触媒の合成を実施するにあたりコア金属となるPdやPtナノ粒子の合成を試みた。特にコアシェル構造を実現するためには界面活性剤などを使用せずに粒子径2~3 nm のナノ粒子を調製する必要がある。本研究では、1段階での貴金属還元法ではなく、多段階で反応が進行する貴金属前駆体に着眼し、種々の担持密度でケッチェンブラック上に担持し、熱還元により目的の貴金属ナノ粒子を合成した。合成した粒子のXRD測定およびFE-SEM,STEM観察より、目標のスケールでの貴金属コアナノ粒子の合成に成功した。 これらの前駆体貴金属コアナノ粒子を用いて、現在、AuML/M/Cコアシェルナノ粒子の調製を試みている。本研究では最終的に、吸着選択性を持つガス雰囲気下で焼成することで、AuMLをコア金属の表面層下に”segregation”させ、表面にコア金属MLを形成させる。このとき、焼成温度によっては、ナノ粒子の凝集や、コア金属のバルク結晶中まで”segregation”させ、表面での熱平衡現象について、ガス組成と温度の影響を現在調査している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも記述した通り、平成28年度は、マルチレイヤーシェル構造を有するコアシェル触媒の合成を実施するにあたり、コア金属となるPdやPtナノ粒子の合成を試みた。特にコアシェル構造を実現するためには界面活性剤などを使用せずに粒子径2~3 nm のナノ粒子を調製する必要がある。本研究では、1段階での貴金属還元法ではなく、多段階で反応が進行する貴金属前駆体に着眼し、種々の担持密度でケッチェンブラック上に担持し、熱還元により目的の貴金属ナノ粒子を合成した。一般的に、界面活性剤を用いない2~3 nm程度のスケールでの貴金属ナノ粒子の合成ではPtについての報告例は数多いが、Pdナノ粒子については粒子の成長が速いため、非常に報告例が少ない。したがって、シングルナノスケールでのPdナノ粒子の粒子径制御は本申請課題では大きな課題の一つであったが、上述のように前駆体合成によりこの課題を克服することができたことは大きな成果であるといえる。 一方で、現在、これらの前駆体貴金属コアナノ粒子を用いて、現在、AuML/M/Cコアシェルナノ粒子の調製を試みている。本研究では最終的に、吸着選択性を持つガス雰囲気下で焼成することで、AuMLをコア金属の表面層下に”segregation”させ、表面にコア金属MLを形成させることを見込んでいるが、焼成条件を調査している段階である。この現象の解明が本申請課題の鍵となる過程であるため、なるべく迅速にこれらの現象を解明し、界面制御可能な条件をみつける必要があるが、手探りな状態であるのが現状である。平成29年度中にマルチシェル・コアカソード触媒の合成法を確立し、将来的には、PtML/Pdcore/Cコアシェル触媒のように酸素還元反応(ORR)に対して高い質量活性を有し、かつ、高い耐久性を兼ね備えた燃料電池カソード触媒の合成を実現させる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、以下のように進行する。 i) PtおよびPdナノ粒子上に置換反応を用いてAuを修飾する。このとき、Au3+を加えた水溶液中にコア金属の表面積よりAuが一層分コア金属表面に置換析出する物質量を算出し、溶液に添加する。コア金属の表面積の測定はii)で説明する触媒評価装置を用いて実測する。調製したAuML/Mcore/Cコアシェルナノ粒子は、10% CO (Arバランス) ガス、あるいは、10% CO (Arバランス) + x% H2 混合ガス雰囲気で焼成し、PtML/AuML/Pt/CおよびPdML/AuML/Pd/Cを合成する。PdML/AuML/Pdcore/Cでは最表面のPdシェルとPt2+の置換反応を利用してPtML/AuML/Pdcore/C触媒を合成する。 ii) 媒評価装置 (BEL-CAT A, マイクロトラックベル社製) を用いて、AuML/Mcore/Cコアシェルナノ粒子のCOガス雰囲気中での熱的安定性および触媒実表面積について評価する。本装置は、昇温・降温速度が制御可能な電気炉を装備しており、ガラス反応管の中に種々のガスを導入し、パルスインジェクション化学吸着測定法により触媒表面積を測定する装置である。したがって、簡易に触媒合成炉としても用いることがでるため、COガス雰囲気中での触媒焼成時における触媒粒子の表面組成をin-situで測定できる。本測定を効果的に使用して、吸着ガス選択性およびGibbs-Thomson効果を由来とするコア金属およびAuMLの格子ミスマッチにより生じるマルチシェル・コアナノ粒子の曲率および応力の影響がナノ粒子表面の熱平衡に及ぼす影響について明らかにするとともにマルチシェル・コア触媒の最適な合成条件を探索する。
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