2018 Fiscal Year Annual Research Report
Disosolved iron transport process and its mechanism driven by sea ice formation and melting in polar oceans
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16K21586
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Research Institution | Fisheries Research and Education Agency |
Principal Investigator |
中野渡 拓也 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 北海道区水産研究所, 主任研究員 (20400012)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 北太平洋亜寒帯 / 低次生態系モデル / 鉄サイクル / リン酸塩 / 潮汐混合 / 18.6年周期変動 / 基礎生産量 / 長期変化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、昨年度実施した親潮海域における表層リン酸塩の季節から年々変動の数値シミュレーションの研究成果を国内の学会で発表すると共に、それに関連した学術論文の執筆に着手した。また、潮汐の18.6年周期変動、及びオホーツク海の温暖化による北太平洋亜寒帯域における基礎生産量に対する影響を評価するために、栄養塩や鉄の長期変動に着目した数値シミュレーションをオホーツク海・北太平洋亜寒帯西部における中解像度の物質循環モデルをベースに過去32年間実施した。数値シミュレーションのデータを解析した結果、A-Lineなどの親潮海域で取得された表層リン酸塩濃度のデータに類似した10年規模の長期変動が定性的に再現されていることを確認した。特に、年平均リン酸塩濃度には1990年代以降に10年周期の変動成分が目立っており、潮汐の18.6年周期変動の位相と異なる特徴を示していた。大気強制、潮汐混合、そして大気ダストの経年変動に関する感度実験を実施した結果、親潮海域における表層のリン酸塩濃度の10年規模変動は主に大気の物理強制場によって説明されることが明らかになった。大気強制場の感度実験データに基づいてリン酸塩濃度の収支解析を行った結果、この親潮海域の表層のリン酸塩濃度の10年規模変動は、数年前にオホーツク海の北部陸棚域で湧昇した栄養塩のリモートな移流によって駆動されていることが分かった。 さらに、栄養塩の取り込み速度(Γ)に基づいて、基礎生産量の過去32年間の長期変化傾向を調べた結果、オホーツク海では秋季(9月)に増加するものの、北太平洋亜寒帯西部では春季(6月)に減少する傾向見られた。Γの律速因子として、栄養塩濃度、鉄濃度、そして光強度の変化を調べた結果、これらの海域における栄養塩の取り込み速度の変化は、主に鉄濃度の変動に起因することが明らかになった。
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Remarks |
この国際共同研究は、科研費(国際共同研究加速基金)として実施したものであり、本研究課題(若手B)はその基課題に相当する。
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