2016 Fiscal Year Research-status Report
社会をつくる芸術:「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」の人類学的研究
Project/Area Number |
16K21588
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
登 久希子 国立民族学博物館, 文化資源研究センター, 外来研究員 (50772258)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 現代アート / 参加 / 芸術の自律性 / 社会的 / プロセス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ソーシャリー・エンゲイジド・アートやソーシャル・プラクティス等と呼ばれる近年の参加型のアート実践を事例に、「社会」および「芸術」という概念を再検討することを目的としている。プロセスを重視し、物質的な「もの」としての作品制作を必ずしも前提としないそれらの実践は、近代西洋的な意味でのアートからは一見乖離していくかのように見える。完成した作品を前提とする既存の芸術の分析枠組みでは十分に論じることができないそれらのアート実践について、本研究はフィールドワークに基づいた人類学的な芸術研究の方法論を提示することを目指している。 初年度は文献研究に加えてポーランドにおける短期調査と東京における継続的な調査を行った。ポーランドでは、現地のアーティスト、キュレーター、研究者へのインタヴュー、関連する資料の収集を行なうことで、アートに「社会的な」役割を求めるポーランドの若手作家の多くが「批評的美術」として知られる一世代上のアーティストたちの社会・政治批判的な芸術実践を参照にしつつ、それを越えようとする試みを行っていることが明らかになった。次年度以降は、実際のプロジェクトの参与観察を行っていく予定である。 東京においては、ソーシャリー・エンゲイジド・アートの文脈で語られるプロジェクトのフィールドワークを行い、いかにプロジェクトへの「参加」が実現されるのかを追った。とくに注目したのは「参加者」たちが自らの実践のどのような部分に「芸術」性を見出しているのかという点である。 「参加」すること、「社会」を見出すこと、ある行為が「芸術」であること、そしてそれぞれがいかにひとつのプロジェクトにおいて関係し合っているのか、今後の調査研究の中で引き続き考察していくこととする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していたニューヨークでの調査が次年度に延期になった以外は、フィールドワーク、研究成果の発表、先行研究に基づく理論面での考察においておおむね順調に進展している。 なお、これまでの研究成果については文化人類学会第50回全国大会とアートマネジメント学会第18回全国大会において発表を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2017年度は8、9月にニューヨーク及びポーランドにおいて特定のアートプロジェクトに関する参与観察を予定している。東京での調査は継続して行う。 前年度に行った調査と研究の成果をふまえ、グローバルな現代アートの文脈において同一の語のもとに位置づけられる個別の事例を比較し、そこでどのような「芸術」や「社会」が現れてきているのかを比較し考察する。 得られた成果は、二度の学会発表と投稿論文として発表する予定である。また最終年度に予定しているワークショップと報告書の刊行の準備についても適宜進めていく。
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Causes of Carryover |
2016年度に予定していたニューヨーク出張が次年度に延期されたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に予定している海外出張において使用する。
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Research Products
(3 results)