2016 Fiscal Year Research-status Report
哺乳類オートファジーに必須な巨大蛋白質FIP200の構造生物学的研究
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16K21593
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Research Institution | Microbial Chemistry Research Foundation |
Principal Investigator |
鈴木 浩典 公益財団法人微生物化学研究会, 微生物化学研究所, 博士研究員 (20625694)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | オートファジー / X線結晶構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
オートファジーは真核生物に広く保存された細胞内分解システムであり、細胞質やオルガネラをオートファゴソームと呼ばれる二重膜(隔離膜)で隔離した後、リソソーム/液胞と融合して内膜ごと分解する現象である。酵母を用いた遺伝学的な研究から約40種類におよぶオートファジー関連(Atg)蛋白質が同定されている。これらの多くは高等生物においても保存される一方で、高等生物に特有の因子や付加領域が存在し、酵母と高等生物とでオートファゴソーム形成過程が異なることが予想される。 本研究では高等生物において必須かつ特有の因子であるFIP200および特有の付加領域(C末端側のWD40 repeatドメイン)を有するAtg16L1に着目して構造生物学的解析を行うことで、高等生物に固有のオートファゴソーム形成過程を明らかにすることを目的としている。 FIP200はいくつかの領域に分けることで、良質なサンプルを得ることは可能であったため、結晶化スクリーニングを行った。C末端側の一部の領域は結晶が得られ、X線回折強度データを収集した。それ以外の領域については、分子の安定化、結晶化能の向上を期待して相互作用分子との複合体を得ることを目指し、結合領域の探索を行った。 Atg16L1はWD40 repeatドメインの結晶構造解析を行うため、発現系・発現領域の検討を行った。昆虫細胞発現系によりゲルろ過クロマトグラフィーで単一のピークとなるサンプルを得ることが可能となった。しかし、結晶化のための濃縮により沈殿が析出してしまう問題点がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
FIP200の結晶が得られた領域については、分解能3ÅのX線回折強度データを収集した。その他の領域は微結晶は得られるものの、再現よく結晶が得られない状況である。細長い分子であると予想され、接触面の少なさ、分子の揺らぎが一因となり、結晶が析出しにくいと考えられる。これらの問題を改善するため、相互作用分子(Atg13、ULK1)との複合体を得ることを進めた。相互作用分子のサンプル調製、FIP200との生化学的な解析から、FIP200のN末端側の領域がAtg13の天然変性領域、およびULK1のC末端側ドメインとの相互作用に関与することが明らかとなった。 Atg16L1はC末端側WD40 repeat領域の大量調製は可能となっているが、濃縮時のサンプル状態不良、また既報の領域ではFIP200と直接相互作用しない、または相互作用が弱くて検出できないことがわかった。 いずれものサンプルも高い精製度で調製することは可能であるが、その性質、結晶化能に問題があり、相互作用分子との複合体形成を目指す方針に転換したため、当初の計画からは若干遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
FIP200のN末端側領域については、Atg13およびULK1との結合領域が明らかとなったため、3者の複合体を調製し、結晶化を試みる。C末端側領域は、すでにデータが取得できた領域についてはセレノメチオニン置換体の結晶を得て、異常分散法による位相の決定と構造解析を進める。その他の領域についてはサンプル精製条件、結晶化条件の最適化を行う。結晶析出の再現性をよくするため、T4Lysozymeを融合するなど、結晶化タグを活用する。結晶が得られたらX線回折強度データの収集、位相の決定、構造解析と進める。適当な結晶が得られなかった場合には、生物種を変えてみる。 Atg16L1ついては、サンプルの状態を改善することが第一である。添加剤を加えることや、発現領域の再検討を行い、良質なサンプルを得て結晶化を行う。
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Causes of Carryover |
発注していた物品の納期が遅れたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
タンパク質の発現、精製、結晶化に必要な試薬類(培地、結晶化試薬など)、ガラス器具、プラスチック類(チップ、結晶化プレート)、タンパク質精製カラムなどを購入予定である。
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Remarks |
微生物化学研究所 http://www.bikaken.or.jp/
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Research Products
(3 results)
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[Journal Article] The intrinsically disordered protein Atg13 mediates supramolecular assembly of autophagy initiation complexes2016
Author(s)
Yamamoto H, Fujioka Y, Suzuki SW, Noshiro D, Suzuki H, Kondo-Kakuta C, Kimura Y, Hirano H, Ando T, Noda NN, Ohsumi Y
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Journal Title
Developmental Cell
Volume: 38
Pages: 86-99
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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