2016 Fiscal Year Research-status Report
スギにおけるマルチ・オルガンの同時並行遺伝子発現ネットワークの構築
Project/Area Number |
16K21596
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Research Institution | Forestry and Forest Products Research Institute |
Principal Investigator |
三嶋 賢太郎 国立研究開発法人森林総合研究所, 林木育種センター, 主任研究員 (30438098)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | スギ / 遺伝子発現 / マルチオルガン / マイクロアレイ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度までに採取していたサンプルを含め、計画していた3個体×6時期(3/10,4/25,6/13,9/16,11/14,1/19)×3器官(頂端、葉、形成層帯)のサンプリングを終了した。また、既に設計済みのマイクロアレイチップ(約2万遺伝子搭載)を用いて、6時期の遺伝子発現プロファイルが構築できた。器官・時期別の遺伝子発現の類似性を解析するために構築された遺伝子プロファイルデータからクラスター解析を行なったところ、器官・時期別に関わらず変動を見せない遺伝子群がある一方で、変動する遺伝子は大きく2つの傾向がみられた。1つ目は、形成層帯と頂端・葉のグループの2つにクラスターが分かれる結果を示した。この頂端・葉の形成層帯に対するグループ化は、どちらも完全に木化した組織が少なく(頂端は、サンプリング毎に上部3cm程度をサンプルしているため、木部組織と比べて未分化の組織を含む)器官間の組織の類似性を示唆するものであると考えられた。2つ目は、遺伝子発現クラスターは、形成層帯と頂端・葉のグループの2つに別れた後のノードにおいて、さらに、おおよその細胞活動期(4/25,6/13,9/16のサンプル)と細胞休止期(3/10,11/14,1/19のサンプル)の2つにグループ化された。この結果は、発達ステージの違いが遺伝子発現プロファイルに現れていると考えられた。 これら2つのことから構築された遺伝子プロファイルデータからクラスター解析によって、器官間の違いや通年の発達ステージが遺伝子発現に顕著に現れることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り研究を遂行できているものと考えている。本年の計画通りサンプリングを終了した。さらに、もう1つの目的である3個体×6時期(3/10,4/25,6/13,9/16,11/14,1/19)×3器官(頂端、葉、形成層帯)の遺伝子発現プロファイル構築をほぼ完成しており、遺伝子プロファイルデータから解析を行う段階まで進捗している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、構築した遺伝子プロファイルデータを精査し、やり直しの必要のあるデータは、遺伝子発現データを取り直すなどのデータ修正や検証を行いたい。その後、得られる遺伝子プロファイルデータから、器官別、組織の発達ステージ別の遺伝発現データに注目し、どのような遺伝子群がそれらの違いに寄与しているのかについて解析を進めたい。その上で、それらの違いに寄与する遺伝子群を構成する各遺伝子間において、発現のタイミングや強さの序列の存在を解析するためにネットワーク解析を行いたい。このネットワーク解析は、既存のカスケードを必ずしも反映しない(元々、スギでは遺伝子間のカスケードはほぼ未解明である。)ため、遺伝子間の未知のネットワークを明らかにできる可能がある。このネットワーク解析によって、モデル植物による既知のカスケードを反映するのか、あるいはスギ独自の遺伝子間ネットワークがあるのかを明らかにすることを試みたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初見込んでいた旅費の使用がなかったのに加え、サンプルの保存にかかる消耗品やRNA抽出に関わる消耗品のための費用を効率的に使用できたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、データの精査によるやり直しが生じた場合の実験にかかる費用、あるいはさらに効果的なサンプルによる追加実験、次年度行う解析の費用として使用することを考えている。
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