2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K21608
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Research Institution | National Agriculture and Food Research Organization |
Principal Investigator |
上杉 龍士 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 中央農業研究センター 虫・鳥獣害研究領域, 任期付研究員 (10423005)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | コナガ / 長距離移動 / 流跡線解析 / 発生消長 / 飛翔行動 / フェロモントラップ |
Outline of Annual Research Achievements |
1)コナガの飛立つ時間帯・時期の推定:当試験場内に10か所のフェロモン誘引性粘着トラップを設置し、コナガの飛翔活動性の日変動を調査した。その結果、18時から24時の捕殺が最も多く(1.746個体/時間)、その他の時間帯にはほとんど捕殺されなかった(0.060個体/時間)。この結果からコナガは日没後数時間の限定された時間帯に飛翔行動が活発になることが分かった。また、茨城県つくば市・下妻市・八千代町にわたり、アブラナ科圃場3か所およびアブラナ科雑草地5か所にフェロモン誘引性粘着トラップを設置し、発生消長を調査した。アブラナ科雑草地では4月下旬から5月上旬に発生ピークがあり、コナガが大量に捕獲された。アブラナ科雑草のバイオマスを考慮に入れると、雑草地が長距離飛来源となっている可能性が高い。これらのデータは、コナガの長距離飛翔のシミュレーションに利用する予定である。 2)コナガの飛行持続時間の推定:風洞の中でコナガ成虫を針金で吊るし風を送り、疑似的に気流中の受動的飛行状態を再現し観察可能な実験系を確立した。装置内のコナガをビデオ撮影し、2時間おきに3回1分間の飛翔行動を記録することによって、コナガの飛行時間を推定した。今までの文献ではフライトミル装置によって数時間程度の連続飛行しかできないといわれていたが、本装置によって平均して1日以上、最も長いもので3日以上連続した飛翔行動を行うことが可能であることが分かった。 3)コナガの発生消長データ(フェロモントラップデータ)の収集:全国の地域農業研究センターや農研機構の研究拠点から、14か所のフェロモントラップによるコナガ捕殺数データを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度以降の研究計画としているHYSPLITを用いた流跡線解析に用いるための基礎的データである「飛立つ時間帯」「飛行持続時間」「発生消長」については、今までの調査研究およびデータ収集によって得ることができた。ただし、初年度の研究で得られた知見から、データ取得手法のブラッシュアップが可能となったので、流跡線解析の確度を高めるために、「飛立つ時間帯」「飛行持続時間」については追加のデータ収集を行う必要がある。以上のように、本研究課題の進捗状況はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度以降の研究計画では、コナガの長距離移動の実態解明のために向けてHYSPLITを用いた後方流跡線解析および前方流跡線解析を中心に、本研究課題を推進する。 後方流跡線解析では、コナガの飛来地である北日本(コナガの発生消長データが取られた地点)を終点とした長距離移動のシミュレーションを行う。後方流跡線解析においては、長距離移動による大量飛来が生じた時期(日)を推測する必要がある。今までの調査で、気温が高くなるとコナガの捕殺数が高まる効果があることが分かっており、一般化線形モデルによって温度効果(特に捕殺ピークの日没後数時間の気温効果)を除いた上で、捕殺ピーク時期(日)を推定する。流跡線はGDAS1による全地球3D気流データをもとにHYSPLITを用いて計算する。個々の流跡線をクラスタ化し、最適なクラスタ(飛来コース)を推定する。過去10年分のデータによって、飛来源として有力な地域を推定し、その傾向を推定する。 前方流跡線解析では、コナガの飛来源と考えられている越冬可能な地域を起点として、飛立ったコナガは、どこへどのようなコースで飛行するのかを推定する。今までの調査で、飛翔行動を行う時間帯はかなり限定されることが判明した。また、飛行持続時間は平均1日(最長3日)程度であることが判明した。そこで、飛翔時間帯を起点とし、飛び上がって気流に乗った後の1~3日での移動距離や、北日本(陸地)への飛来可能性の解析を行う。その際、中国や東南アジアなども仮想的な起点として前方流跡線解析を行い、大陸からの飛来についてもシミュレートする。 また、流跡線解析に用いるデータ精度の向上のために、追加のフェロモントラップ調査、および風洞での羽ばたき行動を撮影したビデオの再チェックも行う予定である。
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Causes of Carryover |
トラップ資材のうち、フェロモンルアーの使用期限が短く購入を見合わせたことによって、発生した残額である。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用残額24,340円はフェロモン誘引式粘着トラップ資材費等、次年度に申請する金額と併せて、研究計画遂行のために使用する。
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Research Products
(1 results)