2016 Fiscal Year Research-status Report
ミセルを反応場に用いた新規高感度イオン分析法の確立
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16K21615
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Research Institution | 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科学センター(研究開発 |
Principal Investigator |
阿久津 和宏 一般財団法人総合科学研究機構(総合科学研究センター(総合科学研究室)及び中性子科, 中性子科学センター, 技師 (60637297)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミセル / イオン分析 / ナノ空間 / EXAFS / 中性子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ミセル溶液中において、Sr(II)蛍光センサーN-(2-hydroxy-3-(1H-benzimidazol-2-yl)-5-methyl-phenylmethyl)-1-aza-18-crown-6-ether(BIC)のSr(II)検出限界が向上する現象を、X線・中性子を用いた錯体構造化学的研究により理解し、ミセル内疎水空間がイオン認識反応に与える影響の具体化を試みている。2016年度に実施した項目、(1)SAXS法によるミセル構造の解析、(2)XAFS法による錯体の局所構造解析の結果について、具体的な内容を以下に示す。 (1)SAXS法の結果について:ミセル粒子の構造が錯体の存在の有無にかかわらず変化しないことを示す結果が得られており、Sr(II)-BIC錯体はミセル粒子内に取り込まれていない可能性が示唆された。 (2)XAFS法の結果について:Sr(II)がBIC及び界面活性剤分子と溶液中で配位結合を形成していることが明らかとなっており、従ってSr(II)とミセルの間に強い相互作用が存在すると断定されている。 上記のように、ミセル粒子の構造・Sr(II)錯体の局所構造の理解が進んでおり、一部の結果は国際会議等にて報告している。2017年度は、BICの重水素化とそれに伴う中性子反射率実験により更に多くの構造化学的情報を得ることで、ミセル溶液内における錯体の構造的特徴を明らかにし、イオン分析法としての基盤となる方法論と技術の確立を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、試料合成と重水素化合成装置の製作は順調に進んでおり、その後のXAFS実験やSAXS実験も開始している。ここまではほぼ予定通りであるが、試料(BIC)の重水素化が途中段階であり、中性子反射率実験の準備が整っていない状況である。一方で、重水素化していないBICでの中性子反射率実験のテストを行っており、BICの重水素化が不調の場合に代替の実験ができるように準備を進めている。総合的に見て、研究の進捗状況はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
上述した通り、試料(BIC)の重水素化とそれに伴う中性子反射率実験が次年度の重要なポイントとなる。2017年度前半は、XAFS実験・解析、試料重水素化、中性子反射率実験・解析が研究活動の中心となる見込みである。なお、試料重水素化についてはオーストラリア国立研究所(Australian Nuclear Science and Technology Organisation、ANSTO)の重水素化研究所に協力を依頼しBIC重水素化の問題解決に取り組む予定であり、その見通しは明るい。2017年度後半には研究を総括し、イオン分析法としての方法・技術論の確立と論文の執筆・投稿を行いたいと考えている。
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