2016 Fiscal Year Research-status Report
相対論的ジェット中の輻射輸送計算に基づいたガンマ線バーストの放射機構の系統的研究
Project/Area Number |
16K21630
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
伊藤 裕貴 国立研究開発法人理化学研究所, 長瀧天体ビッグバン研究室, 研究員 (30434278)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ガンマ線バースト / 相対論的ジェット / 輻射輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ガンマ線バーストの起源として考えられている大質量星を突き破る相対論的ジェットからの光球面放射を、相対論的流体シミュレーションおよび輻射輸送計算を組み合わせることによって評価しています。手順としては、まずジェットが星の外層を突き破り、光学的に薄くなるまでの長時間進化を、相対論的流体シミュレーションを行う事によって計算します。次に、そこで得られた時間発展データを背景流体として採用し、モンテ-カルロ法を用いた輻射輸送計算を行う事によりジェットからの光球面放射を評価します。本年度はジェットのパワーが大きく異なる3つのモデルの計算を行い、主に放射がジェットの性質にどのように依存するかを調べました。
計算の結果からは、ジェットのパワーによって流体力学的な進化は大きく異なる一方で、放射の性質はあまり変化しない事が明らかになりました。中でも特筆すべき成果は、観測から知られている放射スペクトルのピークエネルギーと最大光度の相関関係(米徳関係)が、ジェットの性質によらず観測者の位置の違いによって自然に再現されることが分かった事です。このことは、長年の謎となっていたガンマ線バーストの放射機構が相対論的ジェットからの光球面放射であることを強く示唆しています。また、我々の計算はピークエネルギーが数keV程度となる放射も説明できるため、X線フラッシュとガンマ線バーストが同じ天体を起源としていることも示唆されます。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の初年度の目標は、光球面放射がジェットの性質にどのように依存するかを調べることでした。本年度は実際に多様な条件を採用した計算を実行することによって、放射の特徴的な性質(ピークエネルギーや光度)がジェットの性質にあまり依存しない事を明らかにし、観測事実も再現できることが分かりました。これは当初の目標を達成しているため、おおむね順調に研究が進展しているといえます。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方針としましては、まず第一に、より多様な性質をもったジェットの計算を実行することによって本年度に得られた結論をより強固にし、放射をより詳細に調べることです。次に、異なる大質量星のモデルを採用した計算を行うことによって、星の性質によって放射の特徴がどのように変化していくかを明らかにしていく予定です。
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Causes of Carryover |
主な理由は、本年度は外部機関のコンピューターを用いて大容量データの解析を行うことが可能であったことにより、デスクトップコンピューターを購入する必要がなくなったため、また予定していた海外出張が先方の都合のために中止となったためです。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
デスクトップコンピューターの購入、及び旅費の一部として使用する予定です。
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Research Products
(6 results)