2016 Fiscal Year Research-status Report
大腸菌群フローラ解析による食品汚染源推定技術の開発
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16K21635
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Research Institution | Saitama Industrial Technology Center |
Principal Investigator |
富永 達矢 埼玉県産業技術総合センター, 食品・バイオ技術担当_北部, 主任 (80580539)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 大腸菌群 / 抗体 / イムノクロマト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、大腸菌群フローラを1枚の紙上で15分以内に解析するイムノクロマト技術の確立を目的としている。 すべての大腸菌群株を検出するために、乳糖分解酵素に対する抗体を使用したイムノクロマト分析系の構築を目指した。本酵素は細胞内酵素であるため、菌体内からの酵素抽出法を検討した。超音波抽出法、ジルコニアビーズ抽出法、界面活性剤が添加されたバッファーによる抽出法を試した。いずれの手法であっても抽出液中に酵素活性を検出できたので、簡便で装置を要さないバッファーを用いた手法を以降の試験で用いた。金属コロイドの標識条件、抗体固相化条件等を最適化し、イムノクロマト分析系を構築した。その結果、乳糖分解酵素の標品を検出できた。つぎに、培養後の菌体の酵素抽出液を用いた分析を試みた。1E8 cfu相当のEscherichia coliおよびPseudomonas fluorescensの菌体から酵素をバッファーで抽出し、上記のとおり構築したイムノクロマト分析を行ったところ、両菌とも陽性反応を示した。P. fluorescensは大腸菌群には属さないため、本来、陰性反応を示すと予想される細菌である。抗体の特性により、偽陽性が生じたと考えられたため、別種の抗体を用いて再度分析を試みたが、同様の結果であった。 そこで、菌体表層に対する抗体を用いてイムノクロマトを構築した。抗体の種類によっては、培地中の成分とも反応してしまい、菌株に特異的な検出系を構築できなかった。この傾向はペプトンの種類を変えるなど、培地組成を変更しても改善できなかった。しかし、抗体の種類によっては、菌株特異的な反応を示し、E. coli O157:H7、E. coli K12、Yersinia enterocoliticaの検出に成功した。いずれの菌株も108 cfu相当の菌体を検出できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述のとおり、3種類の抗体で3種類の菌株の検出に成功した。しかし、そのほかの4種類の抗体では、非特異的な結合により、検出系を構築できなかった。食品で頻繁に検出される大腸菌群は、10種以上ともいわれており、研究の進捗がやや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
可能な限り多くの抗体を入手し、未だ検出系が構築されていない大腸菌群株の検出を目指す。また、酵素抽出条件やクロマト分析条件を見直し、酵素検出時における偽陽性の発生を抑制できないか検討する。併せて、代表的な食材の大腸菌群フローラを調べ、検出すべき対象となる大腸菌群種を特定する。
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Causes of Carryover |
乳糖分解酵素を標的とした検出系の構築に予想以上に労力および研究時間を費やしたため、全体的な研究の進行が遅れた。本来、菌体表層を抗原とした抗体の購入に充てる予定であった資金を使用できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
菌体表層を抗原とする抗体の購入に資金を充てる。また、食品から検出される大腸菌群の分離同定に資金を使用する計画である。
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