2017 Fiscal Year Research-status Report
グレリン・デスアシルグレリンによる癌悪液質の心機能改善評価と治療法確立を目指して
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16K21645
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Research Institution | National Cancer Center Japan |
Principal Investigator |
野中 美希 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 特任研究員 (60758077)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | がん悪液質 / グレリン / デスアシルグレリン / 心機能 / Cardio-oncology |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、ヒト胃がん細胞株85As2をBALB/cAJcl-nu/nu nudeマウスの皮下に移植した、がん悪液質モデルを用い、がん悪液質時における心機能の測定を行った。85As2移植群では腫瘍の増大とともに悪液質症状の指標となる体重、累積摂餌量、骨格筋重量の低下が移植2週目より観察された。そこで、移植後2週目をpre-cachexia、移植後8週目をcachexiaと定義し、心機能評価を行った。心エコーの測定では、移植後2週より左室収縮末期径の増加を伴う左室駆出率の減少が認められたのに対し、移植後8週ではさらに進行しており、心電図検査ではQT 時間の有意な延長を認めた。心重量・骨格筋重量はpre-cachexiaにおいても対照群と比べ有意に低下し、cachexia群ではさらに低下していた。 悪液質関連因子と知られるhLIFの血中濃度を測定したところ腫瘍の増大とともに血中LIFの濃度が高くなることから血中LIFは85As2誘発悪液質モデルの悪液質進展に関与していることが示唆された。 ホームケージ行動量については、対照群と比較して85As2移植群の行動量は徐々に減少し、移植後5週目以降で有意差が認められた。興味深いことに、対照群では 総行動量の約70%が暗期での活動であったが、85As2移植群では移植後2週目より明期で活動する割合が徐々に増加し、移植後8週目には総行動量の70%が明期での活動になるという、活動位相の逆転が生じていた。 以上、ヒト胃がん細胞株85As2移植マウスは、腫瘍の増大とともに体重減少、摂餌量低下、心筋・骨格筋重量低下を呈する悪液質症状を発症し、悪液質症状の進展とともに心筋収縮力の低下などの心機能障害が観察された。85As2悪液質モデルはCardio-oncologyの研究において心機能障害を伴う悪液質研究モデルとして有用であることが考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度中に悪液質性心不全の治療として、グレリン・デスアシルグレリンの投与を検討していたが、心エコーが設置されていた動物実験室が昨年10月で改修工事で閉鎖されたため、一度実験をストップせざるを得ない状況となった。改修工事は来年度まで続くため、それまでの間、別の動物実験室へ心エコーの移動などが必要となりセットアップにも時間がかかっている。実験はやや遅れている状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒト胃がん細胞株85As2を用いたがん悪液質モデルでの実験において、同モデルはがん悪液質性心不全が起こすことが明らかとなった。現在、心不全発症のメカニズムについて検討しているところである。近年、がんサバイバーの増加とともに、今まで顕在化していなかった循環器疾患とがんサバイバーのQOLの関連性が注目されており、そのような背景に鑑みCardio-oncology/Onco-cardiologyという学際領域が誕生した。本研究で使用している悪液質モデルは、Cardio-oncology/Onco-cardiologyの観点からも病態解明に適したモデルであり、今後心機能低下のメカニズムを含めた病態表現型の解明を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
当研究では動物実験を行う必要があるが、動物飼育に使用している順天堂大学の動物実験施設が2017年10月で閉鎖してしまい、実験を一度中止しなければならなくなり、年度をまたいでしまうことになった。10月に閉鎖された動物施設には心機能評価を行う心エコーが設置してあったが、今まで使用していた施設とは別の順天堂大学内の動物実験施設に移設されセットアップも完了したところである。現在実験再開のためのセットアップを行っている。
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Research Products
(14 results)
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[Journal Article] Usefulness for the combination of G protein- and β-arrestin-biased ligands of μ-opioid receptors: Prevention of antinociceptive tolerance.2017
Author(s)
Tomohisa Mori, Naoko Kuzumaki, Takamichi Arima, Michiko Narita, Ryunosuke Tateishi, Takashige Kondo, Yusuke Hamada, Hirotsugu Kuwata, Miho Kawata, Mitsuaki Yamazaki, Kazuyuki Sugita, Akinobu Matsuzawa, Kanae Baba, Takayasu Yamauchi, Kimio Higashiyama, Miki Nonaka, Kanako Miyano, Yasuhito Uezono, Minoru Narita.
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Journal Title
Mol Pain.
Volume: 13
Pages: 1-9
DOI
Peer Reviewed
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[Presentation] Therapeutic effects of ghrelin and des-acyl ghrelin on doxorubicin-induced cardiotoxicity.2018
Author(s)
Nonaka, M., Kurebayashi, N., Murayama, T., Sugihara, M., Hosoda, H., Kishida, S., Kangawa, K., Sakurai, T., Uezono, T.
Organizer
62nd Biophysical Society Annual Meeting
Int'l Joint Research
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