2016 Fiscal Year Research-status Report
核タンパク質TDP-43が細胞質に凝集体を形成する機序
Project/Area Number |
16K21650
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
鈴木 元治郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 主席研究員 (60466034)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | TDP-43 / 筋委縮性側索硬化症 / プリオン |
Outline of Annual Research Achievements |
リン酸化TDP-43の細胞質における凝集体形成は、孤発性および家族性ALSで広くみられる病変であることから、ALSでみられる神経変性の原因である可能性が高いと考えられる。しかし、核に局在するタンパク質であるTDP-43がどのようなきっかけで細胞質へと移行するか?細胞質でどのようにして凝集体を形成するか?凝集体の除去は行われているのか?など多くの疑問点が残されている。そこで、TDP-43の細胞内挙動を詳細に解析し、これらの疑問点を明らかにすることを本研究の目的とする。 ヒト神経線維芽細胞SH-SY5Y細胞株においてN末端側にGFPを融合したTDP-43タンパク質を発現するノックイン細胞株をゲノム編集技術を利用して作製した。また、同じくゲノム編集技術を利用してN末端側にGFPを融合したTDP-43タンパク質を安定的に高発現するSH-SY5Y細胞株を作成した。また、大腸菌によって全長のTDP-43タンパク質を非変性条件で発現・精製する系を確立した。精製したTDP-43を用いて、さまざまな条件下で凝集体の形成を試みた結果、様々な構造をもったTDP-43タンパク質凝集体を形成することに成功した。形成したTDP-43タンパク質凝集体を蛍光色素によって標識し、TDP-43ノックイン細胞株などに導入し、導入した細胞内のTDP-43の挙動とゲノムから発現しているGFP-TDP-43の挙動をタイムラプス顕微鏡を利用して継時的に解析した結果、導入したTDP-43凝集体がシードとなり細胞で発現しているTDP-43タンパク質の凝集体を形成する過程を経時的に観察することに成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ヒト神経線維芽細胞SH-SY5Y細胞株においてN末端側にGFPを融合したTDP-43ノックイン細胞株をゲノム編集技術を利用して作製することに成功した。また、同じくゲノム編集によってN末端側にGFPを融合したTDP-43タンパク質を安定的に発現するSH-SY5Y細胞株を作成することにも成功した。また、大腸菌によってTDP-43タンパク質を非変性条件で発現・精製する系を確立することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
TDP-43 タンパク質の細胞内における凝集体形成について、ウエスタンブロッティングなどの生化学的解析を用いて、リン酸化や細胞内局在などについて多方面から検討する。また、凝集体形成がどこで起こっているかを、各種細胞内小器官のマーカーとの共局在を顕微鏡観察によって明らかにする。凝集体の分解にオートファジー、プロテアソームなどが関与しているかを阻害剤を用いた解析などにより明らかにする。また、凝集体形成を誘導するタンパク質の違いやTDP-43シードの構造の違いなどで凝集体形成過程は変化するか?また、TDP-43シードの構造の違いによって細胞に対する毒性が変化するか?を検討し、凝集体の構造と毒性の関係性を明らかにする。以上により、細胞内でTDP-43が凝集体を形成する過程とそれに伴う細胞毒性について明らかにする。
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Causes of Carryover |
本研究所へ異動後、初めての外部資金であったため、入金されるまで使用を差し控えてしまったため。また、家庭の事情により学会等への出張を行うことが難しかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は年度当初より計画的に研究費を使用することを心掛ける。
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