2016 Fiscal Year Research-status Report
精神科医療機関におけるピアスタッフの実態と効果的な活用の可能性
Project/Area Number |
16K21659
|
Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
種田 綾乃 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 社会復帰研究部, 科研費研究員 (70643261)
|
Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
Keywords | ピアサポート / ピアスタッフ / 当事者活動 / 精神科医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、わが国の精神科医療機関におけるピアスタッフ雇用の状況の情報整理を行い、多施設共同による質問紙調査の実施にむけた準備を行うことを目標として研究に取り組んだ。 まず、精神科領域におけるピアサポートに関するネットワーク等につながりのある研究者や実践家(ピアスタッフを含む)、ピアサポート関連のネットワークや研究班などと連携をとり、わが国においてピアスタッフを雇用する精神科医療機関の情報整理を行った。その結果、現在、わが国の精神科医療機関においてピアスタッフが雇用されている機関のおおよそのリストとして整理された。 その上で、ピアスタッフを複数雇用している精神科医療機関(4機関)にコンタクトをとり、各機関においてフィールドワークを行った。ピアスタッフによる実際の支援場面や他の専門職との協働場面を観察し、ピアスタッフや職場の関係者、利用者等からの聞き取りを行い、ピアスタッフの雇用の状況や可能性および課題を把握した。 また、ピアスタッフを雇用する一精神科医療機関(国立精神・神経医療研究センター)においては、対象機関のデイケアで働くピアスタッフと協働のもと、デイケアの利用者に対し、ピアスタッフとの関わりに関する質問紙調査を作成・実施した。調査は、一定期間のデイケア利用者76名に調査票を配布し、40名(回収率:52.6%)からの協力を得た。調査データはピアスタッフとともに分析を行い、調査結果は学会等において発表を行った。 さらに、研究協力者(ピアスタッフ、研究者、実践家等)との検討を重ね、ピアスタッフに対するグループインタビュー調査の計画を作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ピアスタッフを雇用する複数の精神科医療機関におけるフィールドワークや、一機関における利用者に対する試行的なアンケート調査等については行うことができ、多施設共同の研究のための調査協力機関の確保や準備は予定通り進んでいる。 一方で、倫理指針の変更等に伴い研究倫理委員会の承認に当初の予定以上に時間を要していることや、調査協力予定の機関の中には、チーム体制や管理者等の変更、ピアスタッフの雇用における変化等の様々な動きの生じた機関もあり、調査研究の実施において検討が必要な状況等もあり、特に、ピアスタッフに対するグループインタビューに関しては当初の計画よりもやや遅れが生じている状況がある。当初、平成28年度に実施を予定していたグループインタビューについては、平成29年度の実施を予定し、準備を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成28年度に整理されたことや得られた知見をもとに、平成29年度以降は、ピアスタッフに対するグループインタビューとピアスタッフを雇用する複数の医療機関に対する横断的な実態調査を実施する予定である。研究倫理委員会の承認を得た上で、随時調査を実施していく予定である。 協力予定の機関においては、ピアスタッフや関係者の中での動きも見られており、そうした動きも踏まえながら、関係者の範囲を拡大すること(調査時点においてのピアスタッフのみならず、過去数年に、医療機関においてピアスタッフとして働いた経験のある者、あるいはピアスタッフ雇用などに関わった関係者等についても必要に応じて対象とする方向性)も検討している。 また、これまでのフィールド調査を通じ、ピアスタッフとしての雇用形態は、各機関・各ピアスタッフによる差異も大きいことが確認されていることから、ピアスタッフの具体的な雇用状況とピアスタッフ本人・他の専門職・利用者、それぞれの主観的状況との兼ね合いに着目しながら実施していく予定である。 あわせて、平成28年度に実施した調査研究の公表などについても、積極的に行っていきたいと考える。 なお、本研究は、ピアスタッフとの協働の中で調査研究を進めているという実施体制にも特徴がある。今後も、ピアスタッフと連携・協働しながら、調査研究を進めていく方針である。
|
Causes of Carryover |
平成28年度に実施予定としていたピアスタッフに対するグループインタビューの実施が、研究準備(実施体制の整備)に予定よりも時間を必要とし、平成29年度以降の実施へ変更となったことに伴う。 また、多施設共同の調査に関して、調査表の配布は郵送法での質問紙調査を基本としていたが、調査機関の実情をふまえ、直接現地に赴き配布する必要性や、インタビュー調査等の質的データの収集の重要性があることが明らかになったことから、それらの費用を次年度以降に計上する必要があることにも伴う。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度以降、複数回にわたり、精神科医療機関で働くピアスタッフに対するグループインタビューを実施するため、調査実施にかかる費用や協力者への交通費・謝金として使用予定である。 また、多施設共同の調査におけるデータ収集のための費用(調査員の交通費、インタビュー協力者の謝金等)や、調査データの公表等としても使用予定である。
|