2018 Fiscal Year Research-status Report
日本の精神病床入院システムの実証研究と政策科学研究―歴史的アーカイブズ構築と共に
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16K21662
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
後藤 基行 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 特別研究員(PD) (70722396)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 精神病床入院 / 生活保護 / 医療保護入院 / 精神衛生法 / 同意入院 / アーカイブズ / 精神医学史 / 医療扶助入院 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度における成果として、本研究課題に関連する単著(『日本の精神科入院の歴史構造-社会防衛・治療・社会福祉』東京大学出版会、2019.1)の刊行をみた。当該研究は、現在なお大規模病床数、長期在院という解消すべき喫緊の政策的課題を抱えている日本の精神科入院の構造がいかにして形成されるに至ったについて、行政文書や精神科診療録、疫学調査の個票などの一次資料を使用して、患者や家族の実態を検証しながら歴史学的、医療社会学的、政策史的に論じたものである。 また、同書をベースに政策科学研究にウェイトをかけた共著本(猪飼周平編『羅針盤としての政策史――歴史研究からヘルスケア・福祉政策の展望を拓く』勁草書房)を執筆した。同共著本内の論文では、「日本における精神病床入院と生活保護──過剰病床数と長期在院問題の淵源」として、生活保護法が日本の精神病床入院にとって果たしてきた大きなインパクトを強調しつつ、現代の入院についても敷衍して論じた。 また、各種精神医療史に関係するアーカイブズの調査ならびに整備に尽力した。とりわけ、九州大学の資料に関しては、同大文書館や同大医学歴史館との協力関係を構築し、文書館への移管を実行しつつある。ただし、こうした業務は当初は想定しておらず、大量の文書の移動という作業が必要になり、実務・部署間調整などに多大な時間を要した。本研究の遂行に当たっては、一次資料の利用が前提となっているが、このためにも一次資料の調査発掘・整備・利用環境の構築が不可欠であり、こうしたアーカイブズ業務が前進した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究遂行の前提となっていた複数個所でのアーカイブズ整備に関係して、大量の文書移動や、施設責任者の逝去などが想定外に発生した。このため、当該資料を利用した研究は事実上一時的な停止が余儀なくされた。ただし、文書移動に関しては、今後の資料の安定的な利用を保障していくものであり、本質的な研究上の阻害となったわけではない。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度においては、特に大量の資料移管が生じた事案につき、担当部局との連絡・協力を密にし、資料の閲覧・研究利用をつつがなく行うようにしていく。また、新たな所属機関にて倫理審査での承認を受けるなど、研究遂行に際する環境整備を十分に進める。
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Causes of Carryover |
本研究企画では一次資料のアーカイブ整備と利用が研究遂行上の前提となっていたが、資料所蔵機関の個別事由(資料の物理的な大規模移動の必要、施設長の死去など)が生じ、それに伴う事務手続きが膨大に発生した。このため、アーカイブ整備含め研究遂行が滞ったため。 2019年度では、大量の資料の移動そのものは早い段階において完了予定であり、それを受けて業務遂行の予定である。これらは、九州地域での資料閲覧やアーカイブズ整備の必要となっており、旅費や電子化、謝金などによる研究費使用が多くなることが予定されている。
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