低出生体重児の低亜鉛血症の病態解析と対応に関する研究

2016 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 16K21666
• Research Institution: National Center for Child Health and Development
• Principal Investigator: 船山 理恵 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 器官病態系内科部, 栄養士 (10769409)
• Project Period (FY): 2016-04-01 – 2018-03-31
• Keywords: 極低出生体重児 / 亜鉛 / 母乳

Outline of Annual Research Achievements

本研究は、国内二施設の協力を得て、低出生体重児での低亜鉛血症の発症頻度、低亜鉛血症に関連する症状や所見を明らかにし、亜鉛を補充した場合の血清亜鉛濃度の推移とその他の微量元素への影響を調査することを目的に計画した。
平成28年度は、研究実施計画書の最終的な確定作業と微量元素濃度の実験プロトコールの検討を進めてきた。当初、亜鉛の補充が行われている施設と行われていない施設で対象者をリクルートし、施設の違いで二群に分け、関連指標を二群比較することで亜鉛投与の有効性を評価する計画であった。しかし、施設間の患者背景が異なり、様々な調整を試みたが、亜鉛投与のみの影響を評価することは極めて難しいことが分かった。
一方、低出生体重児に対する亜鉛補充を検討するための他の課題として、母乳や調整粉乳からの亜鉛の摂取量と血清亜鉛濃度の関連性を評価することは重要である。亜鉛摂取量と血清亜鉛濃度の関連を調べた研究は少なく、その実態は十分に調査されていない。また、亜鉛は、銅や鉄などの二価イオンと吸収拮抗を示す。亜鉛の投与によって銅や鉄の欠乏を呈した症例の報告もある。安全性の観点から、亜鉛以外の微量元素の栄養状態に関する知見を得ることも有益である。
そこで、亜鉛補充の行われていない児を対象に、母乳や調整粉乳からの亜鉛の摂取量と血清亜鉛濃度の関連性を評価し、亜鉛と吸収拮抗を示す銅、鉄の栄養状態について調査をを進める。新生児科医師の助言を得て研究実施計画書を作成し、国立成育医療研究センター倫理委員会において研究実施の承認を受けた（課題番号1438）。現在は対象者の登録を開始している。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

当初の計画では二施設で患者登録を実施する予定でいたが、患者背景の相違のため、亜鉛投与のみの影響評価することは極めて難しいことが分かった。故に、研究計画の変更が生じた。
新たな研究計画は、極低出生体重児における亜鉛の摂取量と血清亜鉛濃度の関連を評価することを主眼としており、当初の目的からは大きく外れるものではない。やや遅れが生じているが、既に研究計画は倫理審査を受け、承認済みである。今年度は患者登録ならびに情報収集を積極的に進めていく。

Strategy for Future Research Activity

新生児科医師の協力を得て、対象者の登録ならびに情報収集を進める。試料が一定量集まった段階で、ICP-MSによる微量元素分析を進めていく。定期的に、研究協力者である新生児科医師との打ち合わせを設定し、研究結果や課題などを共有できるようにする。尚、当初研究計画より、以下の変更を加えた。
1）低出生体重児の血液中微量元素濃度の分析は当初７種を予定していたが、亜鉛、銅、鉄に限定する。
2) 臨床への応用が可能となるように、ICP-MSを用いた微量元素濃度測定に加えて院内のラボへも出検する
3) 児の亜鉛摂取量を推定するために、母乳中の亜鉛、銅、鉄も測定する。尿中排泄量を評価するために、尿に亜鉛、銅、鉄も測定する。

Causes of Carryover

平成28年度は、ICP-MSを用いた微量元素分析の測定環境の整備に用いた。研究計画の改訂が必要となったため、対象者の試料は得ておらず、本実験は行っていない。予備実験にとどまり、当初の予定額より少額となった。

Expenditure Plan for Carryover Budget

今年度は、患者登録が開始される。実験消耗品や試料送料の他に、新たな研究計画では院内ラボの亜鉛、鉄の検査費用を研究費より支出することにしている。これは当初の計画にはないものであるが、今回の研究を実臨床へと反映させるために必要である。これらの検査費用は、H28年度の残額の繰り越しと、H29年度交付額を充てることで対応する。