2016 Fiscal Year Research-status Report
化学物質の有害性推論手法の確立に資する統計的手法の深化とその適用
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16K21674
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
竹下 潤一 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (60574390)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 化学物質 / 有害性推論 / QSAR(定量的構造活性相関) / Read-across / ロジスティック回帰モデル / 組合せ最適化問題 / メタ戦略 / クラスタリング |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、2つのタイプの有害性推論手法の研究を行った。1つはQSAR(定量的構造活性相関)アプローチであり、もう1つはRead-acrossアプローチである。 QSARアプローチについては、ラットのインビボデータベースと化学物質の分子記述子を用いてラット肝毒性を判別する統計モデルの構築方法を提案した。まず「有害性評価支援システム統合プラットフォーム(HESS)」に搭載されているラット反復投与毒性試験データより、28日間試験結果が報告されている176化合物の情報をトレーニングデータセットとして整理した。統計モデルを構築するには、次の2つの統計的問題点を克服する必要があった。(1)モデルの説明変数の候補である分子記述子の数が学習用化合物の数よりも多いこと。(2)毒性を示す化合物数が、毒性を示さない化合物数に比べて少ない(学習データが不均衡データである)こと。そこで、主要な肝毒性マーカーである血中ALTレベルの上昇を例とし、問題点(1)をk-medoids法を応用することで、問題点(2)をSMOTEアルゴリズムを適用することで克服し、判別モデルをロジスティック回帰モデルを用いて構築する方法を提案した。この結果については論文としてまとめ、国際誌に投稿中である。 Read-acrossアプローチについては、以前に研究代表者が共著論文として発表した9化合物のインビトロ遺伝子発現データを用いて、化合物を分類する手法を提案した。インビトロ遺伝子発現データを用いて化合物を適切に分類するためには、適当なRNAを抽出する必要があった。そこで、多目的の組合せ最適化問題に対するメタ戦略と階層的クラスタリングを併用する方法論を提案した。この結果については、平成29年度早々に論文としてまとめ国際誌に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では平成28年度は次の2つを目標としていた。(1)「有害性評価支援システム統合プラットフォーム(HESS)」に内蔵されているインビボデータの構造を解析し、肝毒性の有害性推論手法の確立に最適なエンドポイントと化合物を選択すること。(2)選択したエンドポイントと化合物について、インビボデータやインシリコデータを収集・整備すること。 今年度の研究において、上記(1), (2)を達成しただけではなく、血中ALTレベルの上昇を例として、判別モデルを構築し、国際誌への論文投稿にまで至った。そのため、「当初の計画以上に進展している。」と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度の研究において、血中ALTレベルの上昇の有無を判別する統計モデルを構築することができた。しかし、この統計モデルが適用可能なケミカルドメインについては、定量的な考察には至っていない。そこで、平成29年度より構築した統計モデルの予測精度の定量化及び適用可能なケミカルドメインの定量化に取り組む予定である。これらの定量化は、OECDのQSAR5原則にできるだけ沿って行う予定である。
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Causes of Carryover |
少額の残が生じたため、翌年度に繰り越しをし、次年度の研究費と合算して有効活用することとした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費も今年度に引き続き研究費の大半を、研究に必要な文献資料代、情報収集・研究成果発表・研究連絡に必要な旅費として使用する予定である。
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