2016 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア内膜プロテアーゼにより調節をうける新規ストレス応答因子の探索
Project/Area Number |
16K21680
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
今井 賢一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 人工知能研究センター, 主任研究員 (80442573)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 内膜プロテアーゼ / PARL / ストレス応答 / バイオインフォマティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ミトコンドリアのストレス応答制御として、内膜プロテアーゼPARLによる基質タンパク質切断による局在・機能調節に注目し、新規のストレス応答因子候補の探索をin silico解析により行うことである。そこで、本年度は、PARLの基質予測パイプラインの開発を行った。既知のPARLの基質は数例しかないが、その特徴としては、1回膜貫通型の膜タンパク質であること、プレ配列を持つことである(持たない場合もある)。そこで、パイプラインの開発には、 (1) 内膜タンパク質の膜貫通(TM)領域予測、 (2) PARLによる切断部位予測、(3) プレ配列予測という3つの予測技術が必要となる。プレ配列予測に関しては、すでに高精度での予測技術を開発済みであるため、内膜タンパク質のTM領域を予測する技術とPARLの切断部位予測の開発を行い、これらを組み合わせることでパイプラインの開発を行った。 ミトコンドリア内膜のTM領域は、小胞体や細胞膜のTM領域に比べ、疎水性も弱く、膜への組み込みに重要な物理化学的性質も異なる。そこで、1回膜貫通型の内膜タンパク質を集め、内膜のTM領域とその周辺を中心領域、マトリックス側領域、膜間部側領域に分類し、アミノ酸組成、物理化学的性質、ホモログ間での配列保存性を特徴量として、機械学習を行うことで、既存手法よりも高精度に内膜のTM領域を判別できる予測法を開発することができた。次に、切断部位予測であるが、既知のPARLの基質は数例しかないため、同じRhomboid型プロテアーゼファミリーに属するAarA 、GlpG、YqgPなどの切断部位情報、変異実験情報を取り入れることで配列情報を増幅させ、切断部位付近の配列プロファイル(位置特異的スコア行列)を作成した。作成したプロファイルで予測されたTM領域を走査することで、切断部位の予測を行う手法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画通り、内膜タンパク質のTM領域予測手法、内膜プロテアーゼのPARL切断部位予測手法をそれぞれ開発することでき、すでに開発済みであったプレ配列予測手法と組み合わせることで、PARLの基質を予測するためのパイプラインを開発することができた。PARL切断部位予測に関しては既存のものはなく、評価は難しいが、内膜TM領域予測は、総合的に既存手法よりも高精度に予測できるものになっており、研究計画は、順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、開発したパイプラインを用い、ヒトプロテオームに対するPARLの基質の探索を行う。そして、得られたPARLの基質候補の中から、ストレス応答と関連性が推定される候補の絞り込みを行う。配列解析によるドメインやモチーフ予測、自身及びホモログタンパク質のタンパク質間相互作用情報から、他のストレス応答因子との相互作用が推定されるものを絞り込む。また、新規ストレス応答因子の探索が目的であるので、他のストレス応答因子との相互作用が報告されていないケースが多いと想定される。機能的に関連のある遺伝子群は、系統関係上で、類似した獲得または欠損のパターン(系統プロファイル)を示すと推測される。そこで、54種の真核生物ゲノムに対するオルソログ探索からヒトの全遺伝子の系統プロファイルを作成し、系統プロファイルによる遺伝子クラスタリングを行う。基質候補が既知のストレス応答に関わる遺伝子を含むクラスターに属していれば、その基質候補は有力なストレス応答因子候補となる。有望なストレス応答因子候補については、共同研究に発展させ、実験的検証を行いたい。
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Research Products
(2 results)