2017 Fiscal Year Research-status Report
ミトコンドリア内膜プロテアーゼにより調節をうける新規ストレス応答因子の探索
Project/Area Number |
16K21680
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
今井 賢一郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 生命工学領域, 主任研究員 (80442573)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 内膜プロテアーゼ / PARL / ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ミトコンドリアのストレス応答制御として、内膜プロテアーゼPARLによる基質タンパク質切断による細胞内局在及び機能の調節に注目し、in silico解析により、PARLによって調節される新規のストレス応答因子候補の探索を行うことを目的としている。そこで、本年度は、昨年度に開発したプレ配列予測、内膜タンパク質の膜貫通領域予測、 PARLによる切断部位予測という3つの予測技術を組み合わせたPARLの基質予測パイプラインを用い、ヒトプロテオーム、ヒトのミトコンドリアプロテオーム(MitoCarta2.0, MitoMiner IMPI)に対するPARLの基質候補探索を行った。得られた候補に対し、文献検索、データベース検索に加え、最近得られたシングルセルレベルの細胞内局在部位解析の情報を用い、細胞内局在部位の解析を行い、ミトコンドリア以外への局在が確からしいものを省き、最終的に45候補を得ることができた。近年、PARLの基質のプロテオーム解析(Saita et al., Nat Cell Biol., 2017)が行われ、新たに4つの基質が同定された。新たに得られた基質と我々の解析で得られた候補リストと比較を行ったところ、それらのうち3つの基質が含まれていた。また、残りの一つに関しては、そのisoformがリストに含まれていた。さらに、実験的確認はまだ取れていないものの、プロテオーム解析により得られた基質候補と我々の候補リストの間には、いくつかのオーバーラップがあった。これらの結果から、我々の候補リストは、新規基質を含んでいる可能性が十分あると考えられ、さらなる解析により新規基質の発見につながると期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本年度中に、開発したPARL基質予測パイプラインにより得られたPARLの基質候補の中から、ストレス応答との関連性が推定される候補の絞り込みを行う予定であったが、本年度、他の研究グループによりPARLの基質のプロテオーム解析が行われ、新たに4つの基質が同定された。それに伴い、そのプロテオーム解析で得られた基質及び基質候補と我々の候補との比較解析を行い、我々の候補リストの有用性の検証解析を行ったこと、さらに、参画している他のプロジェクトでの研究に時間をとられたこともあり、本年度に予定していたPARLの基質候補のストレス応答との関連性解析がまだ完了していないため、当初の計画より遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ヒトのプロテオーム及びミトコンドリアプロテオームの解析により得られたPARLの基質候補から、ストレス応答との関連性が推定される候補の絞り込みを行うための解析を進め、候補リストのブラッシュアップを行いたい。最近、PARLの基質の内膜貫通領域の膜間領域側にある負電荷クラスターが、PARL切断後の細胞質側へのリリースに重要との報告があった。ストレス応答と関連する基質は、PARLによる切断後、細胞質にリリースされることで機能調節に関わる可能性が高い。そこで、得られた候補リスト対する負電荷クラスターの解析もストレス応答との関連性が推定される基質候補の絞り込みに加えることで、候補リストのブラッシュアップを行う予定である。また、有望な候補については、共同研究に発展させ、実験的検証を行うとともに、研究をまとめ、その成果の発表を行いたい。
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Causes of Carryover |
開発したPARL基質予測パイプラインにより得られたPARLの基質候補の中から、ストレス応答との関連性が推定される候補の絞り込みを本年度中に完了させる予定であった。しかし、本年度、他の研究グループによりPARLの基質のプロテオーム解析が行われ、新たに4つの基質が同定された。そこで、上記のプロテオーム解析で得られた基質及び基質候補と我々が得た候補との比較解析を行い、我々の候補リストの有用性を検証するための解析を行ったため、PARLの基質候補のストレス応答との関連性解析を完了することができなかった。これにより研究期間の延長を行ったため、次年度使用額が生じた。生じた次年度使用額は、候補のストレス応答との関連性解析を推進させ、候補リストのブラッシュアップを完了させるための計算サーバの拡張費、研究成果発表のための旅費及び論文投稿費用として用いる予定である。
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Research Products
(2 results)