2017 Fiscal Year Research-status Report
〈社会的養護の家庭化〉に関する研究:日本とイタリアの比較から
Project/Area Number |
16K21684
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Research Institution | National Institute of Population and Social Security Research |
Principal Investigator |
藤間 公太 国立社会保障・人口問題研究所, 社会保障応用分析研究部, 研究員 (60755916)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 家族社会学 / 福祉社会学 / 社会的養護 / 家族主義 / 国際比較 / 質的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、国際比較のためのイタリア現地調査を実施した。具体的には、インノチェンティ捨児養育院、およびUNICEFインノチェンティ事務局にて、職員へのヒアリング調査を行った。インノチェンティ捨児養育院は、長い歴史を持つ、イタリア社会的養護の総本山的存在である。1445年に最初に子どもの委託を受けて以来、1875年の養育院閉鎖まで、実に400年以上もの間、イタリアの要保護児童にとってのセーフティネットであり続けた。養育院閉鎖後は、イタリア社会的養護の研究機関、情報拠点としての役割を果たしている。貴重な歴史資料を多く所蔵する博物館も併設するなど、市民に向けた広報的な役割も果たしている(藤間 2018)。 イタリアは数値の上では「脱施設化」を達成しているが、インノチェンティ捨児養育院のスタッフからは大きく2つの課題が指摘された。第1に、イタリアにおいて里親委託児童数は若干伸びているものの、実は小規模施設である「コミュニティ」の数は減っておらず、理念と実態の齟齬を埋めていくことが必要とされている。第2に、さまざまな面での南北格差がイタリア社会的養護には存在しており、各地域における実態把握と、それにもとづく格差是正が課題とされている(藤間 2018)。 以上のイタリアの事例からは、数値だけで脱施設化と里親委託推進を考えることの限界が示唆される。この知見は、日本における里親委託推進のあり方を考える上でも重要であろう。
※参考文献 藤間公太、2018、「イタリア社会的養護の日本への示唆」『社会保障研究』第9号(近刊)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定通り海外現地調査を行うことができたことに加え、数値データの提供を受けることができた。 研究代表者が怪我により入院したため、国内調査を行えなかったものの、平成28年度に前倒しして実施できていたこともあり、計画に大きな遅れはない。
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Strategy for Future Research Activity |
未完の調査の実施と成果のとりまとめ、後続研究計画の設計を行う。中間成果に関しては、すでに活字化されている部分もあり、平成30年度中に刊行される予定である。最終的な成果についても、学会報告や論文の形で発表していく予定である。
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Causes of Carryover |
前述の通り、研究代表者が怪我で入院をしたため、調査の一部が延期となったため生じた。次年度に代替調査を行うことで使用する予定である。
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