2017 Fiscal Year Research-status Report
体重階級制競技選手の減量が生体内応答に及ぼす影響について
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16K21685
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
西牧 未央 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学部, 契約職員 (20757538)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 酸化ストレス / 減量期間 / レスリング選手 / 電解質濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
急速減量は酸化ストレスを増加させる可能性がある。先行研究において、サウナ浴による体重の3%の脱水が酸化ストレスを増加させたことを報告しており、脱水は酸化ストレスの誘因である。体内水分量が減少する際に、体内の電解質濃度を調節するホルモンであるアルドステロンが分泌される。アルドステロンはNADHオキシターゼを発現させ、活性酸素の産生を亢進させるため、結果として酸化ストレスを増加させるかもしれない。本研究では、大学生男子レスリング選手の異なる減量期間が脱水状態と酸化ストレスに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。1日間、3日間、7日間の3期間で、5%の急速減量をランダム化クロスオーバー試験にて実施した。急速減量の前後および15時間の回復時間を設けた後の3回の採血により酸化ストレスおよび脱水指標を評価した。対象は大学生男子レスリング選手9名であった。結果、9名の選手は全ての試行において、5%の減量を達成した。減量前と比較して、減量後で体内水分量の有意な減少が認められた。電解質濃度の有意な変化は認められなかったが、アルドステロン濃度の有意な増加が認められた。酸化ストレス指標であるdROMが減量後に有意な増加が認められた。しかし、全ての測定項目において交互作用は認められず、減量期間による差はなかった。以上のことから、レスリング選手において急速減量の違いは、電解質濃度および酸化ストレスに影響しないことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究課題Ⅰについて、減量に関する実態調査を各年代カテゴリーの選手に実施することができた。研究課題Ⅱに関しては、当初予定していた10名の被験者のうち、9名しかデータをとることができなかったが、すべての測定を終え、今夏の学会発表を予定している。英文誌への投稿準備も並行してすすめている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において抗酸化指標であるBAPおよびSODの有意な変化は観察されなかった。これらの結果は、5%以内の減量であっても脱水を伴う急速減量はレスリング選手の身体にとって、負の影響である可能性がある。さらに、現状では多くの選手が体重の5%を大きく上回る減量率の急速減量を試合前に行っている実態が報告されているため、計量時には本結果より高い酸化ストレス状態であることに加え、抗酸化能力の低下も考えられる。今後は、異なる減量率による比較をし、レスリング選手の身体へ及ぼす影響について検討する必要がある。
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