2018 Fiscal Year Research-status Report
体重階級制競技選手の減量が生体内応答に及ぼす影響について
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16K21685
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Research Institution | National Agency for the Advancement of Sports and Health |
Principal Investigator |
西牧 未央 独立行政法人日本スポーツ振興センター国立スポーツ科学センター, スポーツ科学部, 契約職員 (20757538)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 急速減量 / 脱水 / 酸化ストレス / 電解質濃度 |
Outline of Annual Research Achievements |
急速減量は短期間で体水分量を減らす脱水によって達成され,ときに重篤な脱水状態を引き起こす可能性がある. 体水分量の減少に対し生体内では恒常性を維持する機能が働くため,体水分量のみで脱水状態を判断することはできない.本研究では選手が減量期間として選択する可能性のある7 日間,3 日間,1 日間に着目し,大学生男子レスリング選手の異なる急速減量期間が脱水状態と酸化ストレスに及ぼす影響を明らかにすることを目的とした. 本研究では,大学生男子レスリング選手を対象とし,異なる急速減量期間が脱水状態および酸化ストレスに及ぼす影響を検討した.体重の5%の減量によって血中Na,ALD濃度および血清浸透圧,酸化ストレス指標であるdROMsの有意な上昇が認めれたが,急速減量期間による違いはなかった.減量前後において,カリウム,クロール,カルシウム濃度の有意な変化は認められなかった.しかし,減量後に体内水分量の減少,NaおよびALD濃度,血清浸透圧の上昇が認められたため,急速減量によって脱水が生じたと考えられる.体内水分量の減少により,体内ナトリウム量やクロール濃度が低下すると副腎皮質からアルドステロンが分泌される.アルドステロンは腎臓Naの再吸収を促進させ,体内のカリウム排泄を促進する.さらに,アルドステロンは心筋や血管平滑筋に作用し,酸化ストレスを増加させる.本研究において,減量前と比較し減量後に血中アルドステロン濃度の有意な増加が認められた.7日以内の5%の急速減量により脱水が生じ,アルドステロン濃度が上昇したことが酸化ストレス上昇のメカニズムと推察される.以上のことから,レスリング選手において1~7日間といった急速減量期間の違いは,電解質濃度および酸化ストレスに影響しないことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究課題Ⅰとして、大学生レスリング選手の年間減量パターン及び潜在的酸化ストレス胴体の調査を実施した。高度に鍛錬している選手の酸化ストレス度(d-ROMs)および抗酸化力(BAP)を1年間を通して測定し、試合前の減量を含めた試合期やトレーニング期の体調および実際に減量に費やす期間や減量幅を調査する。これらの水準や推移パターンは、試合前やトレーニング期の体調を予測する上で有用な指標になりえるか、またそれらをどのようにすれば良い状態にすることができるのかについて、体重階級制競技選手を対象として検討をおこなった。対象は年間5回以上5パーセント以上の減量を実施している体重階級制競技選手20名とした。フリーラジカル解析装置を用いて、酸化ストレス度(d-ROMs)および抗酸化力(BAP)を測定するとともに、POMS(心理テスト)Borg’s scaleを用いた運動強度および心拍数を測定した。 研究課題Ⅱとして、減量期間の違いがアスリートの脱水症状と酸化ストレス度に及ぼす影響について検討した。対象は、大学生・社会人男子体重階級制競技選手10名とした。 下記項目について、比較検討をおこな潜在的抗酸化能測定:安静時の指先採血により、酸化ストレス度(d-ROMs)および抗酸化力(BAP)を測定し、潜在的抗酸化能を算出した。一般性化学検査として、水電解質に関するホルモン(抗利尿ホルモン、アルドステロン)、白血球分隔(好中球、リンパ球、単球、好酸球、好塩基球)、一般生化学検査項目(血糖、遊離脂肪酸、グリセロール、ミオグロビン、クレアチンキナーゼ、CRP、インスリン、コレステロール、 ナトリウム、クロール、カリウム、カルシウム、浸透圧)等を評価した。1名の対象者の測定を完了することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究課題Ⅱにおいて、年度内に測定を実施することができなかった1名の実験を行い、全ての実験を完了させる予定である。その後、各研究課題の結果を論文にまとめ、学術誌へ投稿する。
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Causes of Carryover |
研究課題Ⅱにおいて予定していた被験者数の実験完了が遅れたため、関連するデータを論文にまとめ投稿する作業を年度内に終えることができなかった。次年度に繰り越した使用額で、学会発表および論文の投稿を遂行する予定である。
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Research Products
(2 results)