2016 Fiscal Year Research-status Report
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16K21694
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Industrial Technology Research Institute |
Principal Investigator |
吉野 徹 地方独立行政法人東京都立産業技術研究センター, 開発本部開発第二部環境技術グループ, 副主任研究員 (90614545)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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Keywords | 非晶質炭酸カルシウム / 結晶化 / 圧力 / 複合材料 / 生体鉱物 |
Outline of Annual Research Achievements |
非晶質炭酸カルシウム(ACC)の結晶化温度に及ぼす圧力の影響を調べるために加圧実験を行い、回収したACC試料について熱分析や高温X線回折を用いて結晶化温度を求めた。その結果、加圧圧力が増加するにつれて結晶化温度が低下することが明らかとなった。また、加熱処理により含水量を変えたACCを用意し、同様の実験を行ったところ、含水量が少なくなるにつれ、結晶化温度の低下度合いが小さくなり、結晶化温度の低下にACC中の水が関与していることが明らかとなった。 また、赤外分光法分析から、加圧後のACCに顕著なピークシフトが確認できた。これらの試料はX線回折測定から非晶質であることが確認され、同じ非晶質でも圧力によって構造が変化すること、加えてその変化が不可逆的であることが明らかとなった。これら水の影響、構造の変化は圧力による結晶化温度の変化だけでなく、先行研究のACCの圧力誘起結晶化のメカニズム解明にとっても重要な結果といえる。 さらに、圧力を用いたACCの結晶化技術の応用として、生体鉱物に倣った無機有機複合材料の開発を行った。その結果、ACC-セルロースナノファイバー(CNF)の複合体を経由し、加圧加熱により結晶化させた炭酸カルシウム結晶-CNF複合体の作成に成功した。作成した複合体はACC単体のものに比べ約2倍の圧縮強度を示した。また、熱的に、しかも比較的低温で結晶化させることでCNFの変質・変色を防ぐとともに湿気等に対する耐久性を向上させることが可能となった。今後は他の有機高分子へ応用を広げていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
添加物フリーの非晶質炭酸カルシウムの加圧実験から、赤外分光で顕著なピークシフトが見つかるなど、想定外の成果があり、それらの結果をまとめることを優先した。また、ターゲットとする不純物の内、比較的マクロな不純物であるセルロースナノファイバーの方が扱いの点でも実用化の点でも勝ると判断し、計画を前倒しした。そのため、当初H28年度に計画していた不純物元素の添加実験については翌年以降に繰り越すに至った。 年度ごとの計画には変更が生じたものの、研究計画全体で見た場合、進捗具合は順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
有機高分子との複合化についてさらに研究を進めるとともに、H28年度に計画していた不純物元素の添加実験についても、H29年度に実施する予定である。 また、加圧加熱の方法も工夫し、材料特性の向上につなげていく予定である。
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Causes of Carryover |
計画が前後し、H28年度購入予定だった試薬を次年度購入するため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
H28年度購入予定だった試薬をH29年度購入する。
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