2017 Fiscal Year Research-status Report
常同行動の神経基盤-線条体局所神経回路の生理的役割
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16K21695
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Geriatric Hospital and Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
井上 律子 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究員 (20583826)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | ドーパミン / 常同行動 / パッチクランプ / 大脳基底核 / 線条体 |
Outline of Annual Research Achievements |
背側線条体はマトリックスとストリオソームという解剖学的、神経化学的に大きく異なる線条体コンパートメントから構成される。ストリオソームは線条体の15%以下を占めるに過ぎないが、強化学習に重要なドーパミンニューロンと相互に連絡し合う解剖学的な特徴から、価値判断や評価に深く関わる機能モジュールであると考えられている。二つの線条体コンパートメントの違いが、線条体の病態において多様な行動異常をもたらすと推測できる。 常同行動は、同じ動作を無意味に繰り返す異常行動である。ストリオソームは、ドーパミン受容体の反復刺激により誘発される常同行動との関連が示唆されている。常同行動が起こるとき、線条体コンパートメント間の活動バランスが崩れていると考えられるが、ストリオソームは細胞生理学的研究に乏しいため、その生理的機序は分かっていない。 本研究では、常同行動の出現と増悪が、線条体コンパートメントの興奮性、可塑性の異常に起因すると予想し、細胞生理学的に調べる。線条体コンパートメントさらに回路を区別し、常同行動における線条体局所神経回路の電気生理学的解析を主に行った。 線条体コンパートメント、直接路/間接路を区別して4種類に分けた常同行動モデルの投射ニューロンにおいて、興奮性が異なることをこれまで明らかにした。平成29年度は、常同行動モデルにおけるこの興奮性の違いに関連する電流成分、その詳細の検討を電気生理学的に行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、常同行動モデルの直接路および間接路ニューロンからの電気生理記録により、興奮性の違いに関与する電流成分の検討を主に行った。これまでの結果から興奮性に関わるK電流が変化していると考えられるため、内向き整流性電流、A型K電流、Ca-gated K電流の関与を検討している。本研究では、線条体コンパートメントが見分けられ、かつ直接路または間接路ニューロンが標識されるダブルトランスジェニックマウスを常同行動モデルに用いることで、4種類の線条体投射ニューロンを区別した上でパッチクランプ記録を行うことが可能となっている。要するに2種類のダブルトランスジェニックマウスが必要であるが、動物の安定供給に波があり、実験は継続中である。IVFにより親の数を増やす等の対応を行い、交配・繁殖の状況改善に努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画およびこれまでの結果に基づいて、常同行動モデルにおける興奮性の変化が何に起因するか、時間経過や薬物により回復するか明らかにすることを目指す。興奮性の変化を明らかにした研究成果については論文執筆中である。動物数の確保が研究を遂行する上での課題のひとつとなっているが、ダブルトランスジェニックマウスが必須である実験と野生型マウスでもある程度代替できる実験に切り分けて行うことで対応する。
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Causes of Carryover |
今年度は旅費・謝金の使用がなかったため、次年度使用額が生じた。次年度は今年度の残額とあわせ、物品費としてジェノタイピング関連試薬、電気生理実験で使う阻害・作動薬、免疫組織染色に用いる抗体等の研究用試薬、マウス購入などに使用する。また旅費として、研究成果発表のための学会参加旅費、謝金として英文校閲費等に充てる。
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