2016 Fiscal Year Research-status Report
高速自動解析手法を用いた巨大地震がメイオファウナ群集に与えた影響評価
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16K21698
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
北橋 倫 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 次世代海洋資源調査技術研究開発プロジェクトチーム, 特任研究員 (60713807)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | 生物多様性 / 生物群集 / 環境影響評価 |
Outline of Annual Research Achievements |
イメージング・フローサイトメーター(FlowCAM:Flow Cytometer and Microscope)を用いたメイオファウナの迅速解析法を確立した。2015年3月に東北海洋生態系調査船「新青丸」によるKS15-01次航海において岩手県大槌町沖で採集したサンプルの内、メイオファウナの生息密度が異なると予想される水深の異なる4つの測点(水深65 m, 303 m, 1,064 m, 1,677 m)の堆積物サンプルを用いて、本技術の有用性を検証した。コロイド状シリカ溶液に堆積物を懸濁し、遠心することで、生物を堆積物粒子から分離した。この分離した生物をFlowCAMに投入し画像を取得し、得られた画像を高次分類群毎に計数した。また、FlowCAMでの観察後に再捕集したサンプルを顕微鏡下で観察し、高次分類群毎に計数した。両者の作業時間を比較すると、検鏡作業はどの試料についても数時間だったのに対して、FlowCAMを用いた作業は数10分程度であった。また計数された個体数については、メイオファウナ全体、及び深海メイオファウナ群集で優占する線虫類、カイアシ類において、顕微鏡下での計数とFlowCAM画像による計数は有意に相関していた。これまでのメイオファウナ研究の伝統的な手法では、小さな個体を実体顕微鏡下で観察するという時間の掛かる作業が必須であり、複数の観測点に及ぶ長期的な個体群動態を把握することが困難であった。本研究で開発した新規の手法は、東日本大震災による東北沖深海メイオファウナ群集への影響や、撹乱からの遷移・回復を評価のような、長期的なモニタリングを行う際に有用だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東日本大震災から5年目にあたる本年度8月に海洋研究開発機構所有の東北海洋生態系調査船「新青丸」による研究航海を実施したが、台風による荒天と船のトラブルでサンプルを得ることができなかった。しかしながら、2015年3月に採集した同海域で採集したサンプルを用いることで、FlowCAMの画像取得による計数作業は、通常の顕微鏡下での作業と同等の結果を、迅速に得ることができる。本研究で開発したFlowCAMを用いたメイオファウナの迅速解析法を特許として出願した(特願2016-232868)。また、国内学会(2016年日本ベントス学会・日本プランクトン学会合同大会)で成果を発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度開発したFlowCAMを用いたメイオファウナ解析法を用いて、これまで採集してきた東日本大震災後の三陸沖堆積物の解析を行う。また、次年度も東北海洋生態系調査船「新青丸」による研究航海を実施し、地震から6年後の三陸沖堆積物中のメイオファウナの状態を把握する。
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Causes of Carryover |
本年度8月に予定していた東北海洋生態系調査船「新青丸」航海が荒天と船舶トラブルにより中止になったため、予定していたサンプルを採集できなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
中止を余儀なくされた航海を次年度に再度行うことで、新たなサンプルを取得する。また、これまで採集しているサンプルの処理も進めていく。
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Research Products
(2 results)