2017 Fiscal Year Research-status Report
地震波形を再現する三次元地震波速度構造モデルの構築
Project/Area Number |
16K21699
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
三好 崇之 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 地震津波防災研究部門, 主幹研究員 (20452500)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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Keywords | アジョイントトモグラフィー / 関東盆地 |
Outline of Annual Research Achievements |
地震活動が活発である関東地域を対象に波形インバージョン(アジョイントトモグラフィー)を用いて、地震波速度構造モデルの構築を行い、16回の反復で十分な収束が得られた。本研究では、インバージョンの反復ごとに速度構造だけでなく、速度・密度・減衰の経験式に基づき密度構造と減衰構造も更新した。これらの影響を評価するため、最終モデルに対して密度構造と減衰構造を初期モデルに置き換えて波形計算を実施し、最終モデルによる波形と比較をした。その結果、5-30秒の帯域で波形の顕著な違いはみられず、密度構造と減衰構造の変更に関して、インバージョンの結果への影響は小さいことが分かった。一方、インバージョンで得られた結果に対する検証を実施した。方法は三つである。まず、帯域別に波形の一致度を調査した。20-30、10-30、8-30、5-30秒のぞれぞれで波形の一致度が改善していることが確認できた。インバージョンに使用しなかった地震についても同じ帯域で調査したところ波形の改善がみられ、地震波形を再現する構造モデルの構築が適切になされたことが分かった。次に、P波とS波に対するデータカバレッジを調査した。本研究の解析領域に対して地震波の感度解析を行ったところ、解析領域はP波・S波ともに地震波が十分に通過する領域であり、妥当なP波・S波速度構造解析が可能であることが分かった。三つめの検証として分解能テストを実施した。深さ10kmと深さ40kmに速度構造にガウス型の擾乱を与えてその影響を評価した。いずれの場合も、インバージョンによって妥当な分解能で速度構造が得られることが分かった。本研究で使用した震源と観測点組み合わせによるデータセットで、地震波形を再現する妥当な速度構造モデルが構築できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究代表者の異動により、計算機環境を再整備する必要性が生じたため、必要なプログラム群を防災科学技術研究所の計算機に移植し、計算環境を整えた。速度構造以外のパラメータが地震波形に影響するかということと、インバージョンで得られた結果に対する検証を実施し、妥当な研究結果が得られていることが分かった。研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度までに、関東地域を対象とした波形インバージョンによって、関東盆地を含む地震波速度構造の推定に成功した。今後はより分解能の高い地震波速度構造モデルの構築をするため、防災科学技術研究所の強震観測網や高感度地震観測網等の波形データの活用の検討を行い、本研究で解析した地震を対象に波形調査を行う予定である。また、当初予定の日本列島規模など、異なる解析領域と帯域の検討を行うことで、波形インバージョンによる構造推定の事例を増やす予定である。
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Causes of Carryover |
所属機関の変更があり、業務エフォートが変更となったため調整が生じたほか、論文出版に関する費用が少額ですんだため、次年度使用額が生じた。さらに解析を進めるため必要な計算機を購入し、積極的に学会発表と研究成果発表を行うことで適切に予算を執行する。
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Research Products
(5 results)