2016 Fiscal Year Research-status Report
電力自由化及び炭素税導入が地域の電力需給・電力炭素強度に与える影響評価
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16K21703
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Research Institution | Institute for Global Environmental Strategies |
Principal Investigator |
脇山 尚子 公益財団法人地球環境戦略研究機関, その他部局等, リサーチャー (60625359)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 再生可能エネルギー / CO2排出量 / 炭素強度 / 電力システム改革 / 2030年 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、2020年以降の送配電部門の法的分離および新たな電力市場の創設を含む電力システム改革、および、2030年のGHG排出削減に向けた炭素税の導入の可能性を考慮し、2030年までの電力需要および供給、GHG排出量に与える影響を様々な側面から分析している。 平成28年度は、電力システム改革または炭素税導入が、2030年の電力需給およびGHG排出量にどのような影響を与えるかに関し、2つの側面から分析を行なった。一つ目は、2016年の電力の小売全面自由化、2020年の送配電部門の法的分離、および炭素税導入による電力料金の増加といった外生的なショックの動的な影響が日本の電力需要とCO2排出量にどのような影響を与えるかに関し、時系列計量経済モデル(自己回帰移動平均モデル:ARMAモデル)を用いて分析を行なった。ARMAモデルの構造とショックダミーを組み合わせた分析を用いることにより、回帰分析による切片やパラメータの変動といった単純な形態のショックだけでなく、ショックの減衰などの動的な過程も織り込み、2030年の電力需要を予測した。本研究は、査読論文として発表した。 2つ目の研究では、製造業(鉄鋼、化学、機械工業分野)に焦点を当てた炭素税の導入によるエネルギーおよび炭素強度への影響を分析するため、エネルギー補助金や燃料価格の変化がエネルギーおよび炭素強度にどのような影響を与えてきたのかを、過去のデータを用いて分析し、炭素税が導入された場合にどのような変化が起こり得るかを考察した。1つ目の研究と同様に時系列計量経済モデル(自己回帰移動平均モデル:ARMAモデル)を用いた分析を行った。本研究の結果は、査読論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに2つの研究を終え、平成29年度の研究に取り組んでいる。平成28年度の時点で、平成29年度に行う2030年の日本の地域における電力のエネルギーミックスおよび各地域の排出係数の削減ポテンシャル分析を実施した。2020年の電力システム改革の考慮し、各地域で2030年での電力システム間の電力融通、再生可能エネルギーのグリッドへの接続ポテンシャルを想定し、包括的な分析を行った。その分析を踏まえ、電力システムの低炭素化に向けた日本の電力部門が抱える喫緊の課題や現在議論されている電力システム改革の課題を考察した。 さらに、米国のケーススタディを用いて、米国の電力自由化および地域送電機関の導入が州ごとにCO2排出量にどのような影響を与えてきたのかに関する分析を始めた。州ごとに電力自由化、燃料、GDP、再生可能エネルギー利用割合基準(RPS)の導入などの変数を用いて、どの変数がCO2排出量削減に影響を与えたのかについて分析を行っている。 また、地域電力のエネルギーミックスが労働生産性に与える影響を分析するため、日本の地域間産業連関表の詳細なツールの開発を始めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の研究では、日本の電力需給構造や電力系統システムは地域内・地域間で異なるため、地域別の電力需給パターン、電力システム、電力構成を考慮した日本全体のCO2排出量削減の可能性を分析する。さらには、地域電力に関する分析として、地域間産業連関表を用いた各電力会社の労働生産性の分析を行う。 平成29年度は、平成28年度に行った2030年の日本の地域における電力のエネルギーミックスおよび炭素強度分析の論文を投稿するとともに、米国のケーススタディを用いた米国の電力自由化および地域送電機関の導入による州ごとのCO2排出量への影響分析を国際エネルギー経済学会で発表する。さらに、国際産業連関学会で、現在開発している日本の詳細な地域間産業連関表モデルおよび、モデルを用いた地域電力会社ごとの労働生産性の分析の結果を発表する。
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Research Products
(2 results)