2016 Fiscal Year Research-status Report
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤のAhR活性化に起因する代謝運命と毒性機構の解明
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16K21710
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
永吉 晴奈 大阪府立公衆衛生研究所, 衛生化学部, 主任研究員 (70516757)
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Project Period (FY) |
2016-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 紫外線吸収剤 / チトクロムP450 / 代謝 / AhR活性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では申請者が見出した、ヒトアリルハイドロカーボン受容体(AhR)リガンドとして機能するベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BUVSs)が一般的なAhRリガンドの3分類(ダイオキシン型、PAHs型、無害型)のどの型に属するかを明らかにするものである。 なおダイオキシン型とは、生体内で代謝を受けずに長期間残留し、AhRの活性化に連なる様々な遺伝子の転写を促進し続けて生体に影響を及ぼすタイプのリガンドである。またPAHs型はAhR関連薬物代謝酵素によって究極活性物質に変化し、DNA損傷性や変異原性を示すことで発ガンを促す可能性を持つリガンドである。最後に無害型はポリフェノールやフラボノイドなどのように一次的にAhR関連遺伝子を発現誘導し、自らは速やかに代謝排泄される物質である。すなわち、ダイオキシン型やPAHs型に分類されるAhRリガンドは、ヒトへのリスクになる物質である。 平成28年度は、BUVSs4種類(UV-P、UV-9、UV-326、UV-090)について、代謝後のAhR活性の変化を調べた。AhRの活性化によって発現誘導されるヒトチトクロムP450酸化還元酵素であるCYP1A1、1B1、1A2とBUVSsを3時間反応させ、反応液のAhR活性を酵母レポータージーンアッセイで評価した。また反応液中に存在するBUVSs代謝物の探索をLC-MS/MSを用いて実施した。 結果として、4種類のAhRリガンドとなるBUVSsのうちUV-PのAhR活性がCYP1A1、1B1、1A2のいずれの酵素との反応によっても著しく低下し、AhR活性を失った。また、LC-MS/MS探索結果からUV-Pには水酸基が1つ付加したと思われる代謝物のピークを見出し、大まかな分子構造をえた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般的にAhRリガンドは自らが誘導するCYPsによって代謝、排泄されるが本年度の検討によってUV-Pのみに著しいリガンド活性の低下を確認した。UV-PはBUVSsの中では比較的強いAhR活性を持つ物質であるが、同程度の活性化能を持つUV-9との生体内挙動の差がある、ひいてはヒトへのリスクに差がある可能性が判明した。次年度この差の原因を明らかにしたい。
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Strategy for Future Research Activity |
平成29年度はUV-P以外のAhRリガンド性BUVSsについてAhR活性化に関与しないチトクロムP450や抱合反応による代謝の有無を評価し、いかなる条件においても生体内で安定的なダイオキシン型リガンドであるか決定する。またAhR関連CYPによって代謝されたUV-Pについては、代謝後のDNAとの反応性をDNAアダクトーム解析等を用いて検討し、迅速に代謝され人体へ影響を及ぼさない無害型リガンドか、DNA損傷性を持つPAHs型リガンドであるかを決定する。以上から、UV-P、UV-9、UV-326およびUV-090がAhRリガンドとしてどのタイプに分類されるのか決定する。
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Causes of Carryover |
平成28年度においては代謝酵素とBUVSsの反応および反応産物の探索を中心に行ったため必要な物品数が想定より少なかった。また、学会参加も宿泊等を伴わない開催地であったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
DNAアダクトーム実験用の酵素、変異原試験用の物品、分析機器消耗品、旅費や論文投稿関連費用に使用予定である。
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