2017 Fiscal Year Research-status Report
次世代望遠鏡群による宇宙背景放射観測の展開-宇宙の暗黒成分とインフレーション-
Project/Area Number |
16K21744
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
日下 暁人 東京大学, 大学院理学系研究科, 准教授
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Project Period (FY) |
2017 – 2019
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Keywords | 宇宙物理 / 電波天文学 / 宇宙マイクロ波背景放射 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、2つの宇宙背景放射(CMB)望遠鏡群プロジェクト、Simons Arrayと将来計画Simons Observatoryを遂行し、最終的に現行実験を大きく上回る制度でCMBの測定を行うこと、特にそのための装置開発およびデータ解析手法を進展させることを目的とする。これらの実験においては、検出器数を増やすことにより統計誤差を大幅に削減するが、それに追従する形で系統誤差や相関のあるノイズを削減するために、本研究では半波長板を用いた偏向変調に焦点を当てて、装置開発およびデータ解析の両面から研究を進めた。装置開発においては、高温超伝導ベアリングを用いたSimons Arrayのための連続回転式低温半波長板が完成し、試験および評価を進めている。また、CMB観測用超伝導検出器を動作・テストさせ、半波長板の磁場による影響を評価するための冷凍機システムの構築を進めた。さらに、Simons Observatoryのための半波長板システムの設計と、特にそれに必要な大口径の超伝導ベアリングの開発が進んでいる。一方、データ解析においては、Simons Arrayのための、次世代ハイパフォーマンスコンピューティングシステムに最適化した解析パイプラインの開発を進めている。また、データ解析分野において、連続回転式半波長板の技術実証実験とも呼べるAtacama B-mode Search(ABS)実験の解析結果をリリースした。Simons Observatory実験を構成する望遠鏡群のうち、インフレーションの測定に特化した小口径望遠鏡群は、特に半波長板システムの光学的な設計においてABS実験を踏襲しており、ABS実験による実証は半波長板を用いた高精度CMB測定を大きく後押しした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Simons Observatory実験のための連続回転式低温半波長板の設計・開発においては、当初の計画以上の進展が見られた。特に、設計を進める上で明らかになった、本システムに不可欠なブレークスルーである大口径の超伝導ベアリング(我々の知る限り世界最大)の開発を大幅に前倒しして進めており、まもなく実証を完了する。設計も前倒しして進んでいる。Simons Arrayのための連続回転式低温半波長板の統合試験も順調に進み、Simons ArrayのみならずSimons Observatoryのために有用なデータを取得した。一方、検出器評価のための冷凍機システムについては、冷凍機納入がやや遅れたためスケジュールの遅れが少しあるが、全体計画に問題はない。また、Simons Array望遠鏡群のうち最初の一台(低温半波長板を使わない)の設置がやや遅れ、それに従ってそのためのデータ解析の準備もやや遅れているが、最終的な研究遂行に問題のあるレベルではない。
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Strategy for Future Research Activity |
Simons Arrayのための低温半波は試験を続けた後、受信機への統合を行い試験する。Simons Observatory用の半波長板システムについては、超伝導ベアリングの評価を終了し、システム統合を行う。また、Simons Arrayデータ解析のための準備を進める。
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Causes of Carryover |
冷凍機納入が、29年度3月から遅れたため。30年度5月初頭に納入予定となり、遅れは数ヶ月なので研究への影響は少ない。そのほかの部分の研究・購入についてはむしろ大幅に前倒しして進んでいる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
年度初頭に使用機材をほとんど揃え、年度一杯十分な試験などが出来るようにする。具体的には、上記の通り5月中に遅れていた冷凍機システムの納入・購入を完了する。大口径ベアリング評価用の機材を4月中に購入し、開発中の大口径ベアリングの購入も5月中に完了する。
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