2021 Fiscal Year Research-status Report
染色体自身が制御する分裂期の分子機構と、その機能破綻による疾患誘導機序の解明
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16K21749
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
横山 英樹 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 准教授 (60397908)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 細胞骨格・運動 / 分裂期 / 紡錘体 / 染色体分配 / 疾患誘導機序 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞分裂の進行に関わりうる蛋白質群を独自に同定し、その解析によりMEL-28など複数の蛋白質の分裂時の機能を解明した。最近はRECQL4を発現しない患者細胞に分裂時の染色体整列異常を見出し、それが疾患の原因となっている可能性を提案した(Yokoyama et al. Life Sci Alliance 2019)。同定200分子が分裂の未知の制御機構を解明する優れた資源であるのが証明されたため、本年度は18蛋白質をRNA干渉法により細胞から除去し、生じる異常により分類・選抜した。CHTF18など6分子の除去が顕著な紡錘体形成異常を示した。一方、PABPN1など4分子は通常2極の紡錘体の多極化を生じ、極形成での重要性が示唆された。さらにNOC4Lなど4分子の除去は、分裂期にある細胞の割合を増加させた。その他、分裂細胞の割合を減少させる分子が1つ、染色体整列異常を示すのが1つ、異常がないものが2つだった。今後はCHTF18(紡錘体形成異常)、PABPN1(紡錘体多極化)、NOC4L(分裂細胞の増加)に着目し解析する。 すでに紡錘体形成での重要性を見出していたCullin2, GLTSCR2について、Topoisomerase II阻害剤による強制的な染色体整列実験により、Cullin2が染色体整列に、GLTSCR2は微小管形成に重要であるのを明らかにできた。校正実験中のSART1について、査読者の要求であるヒト細胞への外来性SART1導入によるレスキュー実験に成功。内在性と外来性のSART1が共に紡錘体極の最端に局在することを示し、これまで例がないこの局在をSART1 capと名付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学生3人の参加により、複数のテーマを同時並行で進めることができた。特に18蛋白質のRNAiスクリーニングにより、分子を紡錘体形成に関わるもの、紡錘体の極形成に関わるもの、細胞分裂期の進行に関わるものに分類・選抜することができた。 校正実験中のSART1については、外来性SART1が内在性と同様に紡錘体極の特有な場所(最端)に局在することを示せた。査読者の他の要求であるライブセルイメージングについては、ドイツの2大学との共同研究により成功し、結論を得ることができた。全ての要求には答えられず再投稿には至らなかったため、進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
SART1についての校正実験と、論文の再投稿を最優先にする。次年度は4人の学生が研究に加わる。校正実験と共に、分類・選抜したCHTF18、PABPN1、NOC4Lなどの機能解析を進めていく。 ドイツや海外との共同研究を引き続き行い、成果を上げる。また客員研究員となっている産業技術総合研究所において、フローサイトメトリー、リアルタイムPCR、マススペクトロメトリーなどの先端技術を用いた共同研究を行う。
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Causes of Carryover |
本年度はCO2インキュベーター、蛍光顕微鏡、高速遠心機など、本研究に必要な機器を助成金で購入した。しかし新型コロナウイルス感染拡大により、研究室のメンバーが実験できる時間が制限され、学会参加もできなかった。そのため、人件費、物品費、旅費のいずれにおいても次年度使用が生じた。 次年度は、所属研究機関にない蛋白質精製用の高速液体クロマトグラフィー・フローサイトメトリーなどを、助成金を使って揃え、さらに研究環境を整備する計画である。
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