2022 Fiscal Year Research-status Report
染色体自身が制御する分裂期の分子機構と、その機能破綻による疾患誘導機序の解明
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16K21749
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Research Institution | Ibaraki National College of Technology |
Principal Investigator |
横山 英樹 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 准教授 (60397908)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 細胞骨格・運動 / 分裂期 / 紡錘体 / 染色体分配 / 疾患誘導機序 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞分裂に関与しうる蛋白質群を独自に同定し、それらの機能解析により紡錘体形成機構をはじめ分裂の未知の制御機構を解明している。昨年度、18の同定蛋白質をRNA干渉法によりヒト細胞からそれぞれノックダウンし、顕著な異常を示すものを選抜した。本年度はノックダウンにより紡錘体の多極化が誘導されるPABPN1、分裂期細胞数が異常に増加するNOC4Lについて解析を進めた。 PABPN1 (poly A-binding protein nuclear 1)はmRNA前駆体のポリアデニル化に関わることが知られているが、紡錘体形成への関与の報告はない。高品質のヒトPABPN1抗体を得られなかったため、組換えPABPN1(Xenopus laevis)を発現、それを抗原としてウサギでXenopus PABPN1抗体を作製した。抗体を固定したビーズを用いて、カエル卵抽出液から内在性のPABPN1を効率よく除去することができた。この卵抽出液を用いて紡錘体形成の再構成反応を行ったところ、PABPN1がないと分裂期に染色体の周りに十分な微小管が重合せず、紡錘体も形成されなかった(中村ら、学会発表)。つまり、ヒトやカエルにおいてPABPN1は紡錘体形成に必須なことを明らかにできた。 NOC4L(Nucleolar complex 4-like) はリボソームの生合成に関わることが知られているが、細胞分裂への関与の報告はない。我々は、NOC4Lノックダウンが分裂期細胞の増加だけでなく、紡錘体の多極化も引き起こすことを明らかにした(小川ら、学会発表)。また市販のヒトNOC4L抗体を用いてHeLa細胞を染色し、NOC4Lが紡錘体の両極に局在するのを見出した。さらにノックダウンによる異常は、ノックダウン耐性のNOC4Lを発現させると回復できた。つまり、NOC4Lは紡錘体極に局在して紡錘体の多極化を防ぐことで、細胞分裂の進行に貢献しているという結論に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
学生4人の参加により、複数のテーマを同時並行で進めることができた。特にPABPN1やNOC4Lの重要性や役割を明らかにすることができた。校正実験中のSART1については、導入した全長SART1が内在性と同様に紡錘体極の最先端(SART1 cap)に局在することを示せた。しかし、欠失変異体SART1についてはSART1抗体が認識しないため局在を特定できなかった。それを明らかにするようにとの査読者の要求に答えられず再投稿には至らなかったため、進捗状況はやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
PABPN1、NOC4Lについて、それらの直接の分子機能を明らかにして学術論文への投稿を目指す。PABPN1は、機能解析するためのツールとして抗体を作製済みで、それを用いてカエル卵抽出液よりPABPN1を除き、種々の再構成アッセイを行ないその分子機能を特定する計画である。NOC4Lについてはヒト細胞のNOC4Lノックダウンによる異常に対するレスキュー実験を確立したため、今後NOC4L欠失変異体を複数作って、どのNOC4Lドメインが異常回復や中心体への局在に重要かを明らかにする。 SART1については、各欠失変異体にMycタグをつけてそれらの細胞内局在を明らかにし、校正中もしくは新しいジャーナルへの投稿を目指す。
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Causes of Carryover |
今年度、本研究に必要な高速液体クロマトグラフィーなどを購入しようとしたが、戦争などの社会情勢の変化を受け価格が高騰し、また年度中に機器を納品できないという問題が生じた。次年度は時間に余裕を持って高速液体クロマトグラフィー、ナノスペクトロメーターなどを発注し、助成金を使って研究環境を整備する計画である
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