2018 Fiscal Year Research-status Report
稀少呼吸器疾患の新たなモデルマウス作製とマクロファージによる新規細胞治療法の開発
Project/Area Number |
16K21750
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
鈴木 拓児 自治医科大学, 医学部, 准教授
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Project Period (FY) |
2017 – 2019
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Keywords | 呼吸器疾患 / 肺胞蛋白症 / ノックアウトマウス / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
呼吸に必須な肺サーファクタントは、肺II型上皮細胞と肺胞マクロファージによるその産生と分解のバランスによって恒常性が維持されている。肺胞蛋白症とは肺サーファクタント由来物質が肺の末梢気腔内に異常に貯留し呼吸不全に至る疾患群であり、その原因から自己免疫性、遺伝性、続発性などに分類され、その大部分は肺胞マクロファージの機能異常が原因である。 申請者らはこれまで、ヒト遺伝性肺胞蛋白症の原因探索、診断、病態解明および新規治療法開発の研究に従事してきた。遺伝性肺胞蛋白症はGM-CSF受容体遺伝子(CSF2RAあるいはCSF2RB)変異によって生じるが、いまだ有効な疾患特異的な治療法はない。そこでマウスモデル(Csf2rbノックアウトマウス)を用いて、肺マクロファージ移植法という細胞治療および遺伝子治療を提唱してきた(Suzuki. et al. Nature. 2014)。同治療法は骨髄移植の際に必要な放射線照射や化学療法などを行わずに、マクロファージを一回、直接肺へ移植する方法であり、長期間にわたる移植細胞の生着と疾患の改善および安全性が確認されており、有効な治療法と考えられる。しかしながら、ヒトで患者数の多い(約9割を占める)CSF2RA遺伝子変異による疾患に相当するCsf2raノックアウトマウスはこれまで存在しなかったために、病態の解析や治療法の検討といった基礎的な研究が困難であった。そこで今回新たにCsf2raノックアウトマウスを作成し、同マウスの病態解析を行っている。さらに同マウスを用いて上記の新規治療法の開発研究をおこなっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1. Csf2raノックアウトマウス作製と解析(Hu博士(Cincinnati Children's Hospital Med Center、米国)と共同研究) 目的のノックアウトマウスを作成し、メンデルの法則にしたがう遺伝形式を確認した。マウス固定肺の病理学的検討および気管支肺胞洗浄(Bronchoalveolar lavage : BAL)を解析し予想通りの肺胞蛋白症の病態を呈していることが認められた。マクロファージの機能(貪食脳、サーファクタント取り込み分解能)について研究し解析している。 2. 肺マクロファージ移植治療(Trapnell博士(Cincinnati Children's Hospital Med Center、米国)と共同研究) 野生型マウス骨髄由来マクロファージを麻酔下でノックアウトマウスの肺へ経気管的に一回投与(移植)し、2か月後の肺病理組織像、BAL細胞像、表面マーカー、遺伝子発現およびBAL液について(混濁度、脂質濃度、蛋白濃度、サイトカイン濃度)を比較検討している。現在、投与後6か月後の効果について解析中である。 3. 遺伝子治療のためのウイルスベクターの構築と機能解析、およびマクロファージによる肺マクロファージ移植治療(遺伝子治療モデル)(Lachmann博士(Hannover Medical Center、ドイツ)との共同研究) Csf2ra遺伝子を発現するレンチウイルスベクター(EFS. Csf2ra. LV)を構築し、予想通りに機能することを確認した。現在、ノックアウトマウスの骨髄造血幹細胞(LSK細胞)に遺伝子導入し、上記と同様にマクロファージに分化させた後にノックアウトマウスに対して肺マクロファージ移植を行い(遺伝子治療モデル)、上記2と同様の解析を行っている。 4. マウスiPS細胞由来のマクロファージを用いた肺マクロファージ移植治療(iPS細胞治療モデル) Lachmann博士およびTrapnell博士との共同研究) 正常なマウスiPS細胞から分化させたマクロファージについて他の組織マクロファージと表面マーカーおよび包括的遺伝子発現(RNA-seq)について比較検討した。さらにこのiPS細胞由来マクロファージを用いて上記と同様にノックアウトマウスに対して肺マクロファージ移植し(iPS細胞治療モデル)、その治療効果を確認している。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 肺マクロファージ移植治療(Trapnell博士(Cincinnati Children's Hospital Med Center、米国)と共同研究) 現在進行中の動物実験について完成させ、データを収集し、論文にまとめ投稿する。 2. ウイルスベクターを用いて遺伝子治療したマクロファージによる肺マクロファージ移植治療(遺伝子治療モデル)(Lachmann博士(Hannover Medical Center、ドイツ)との共同研究) 現在進行中の動物実験について完成させ、データを収集し、論文にまとめ投稿する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた2年間での研究内容が終了せずに遅延し、約3年間を要することになった理由は、(1)帰国後に研究代表者が本研究以外の業務で徐々に多忙になったこと、(2)個々の実験・研究が当初の計画以上に時間を要したこと、(3)海外の共同研究者の施設で動物実験施設におけるウイルス感染による汚染が生じたために実験・研究の遅延が生じたこと、による。今後は現在進行中の動物実験について完成させ、データを収集し、論文にまとめ棟くする予定である。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] IFN-β Improves Sepsis-related Alveolar Macrophage Dysfunction and Postseptic Acute Respiratory Distress Syndrome-related Mortality.2018
Author(s)
Hiruma T, Tsuyuzaki H, Uchida K, Trapnell BC, Yamamura Y, Kusakabe Y, Totsu T, Suzuki T, Morita S, Doi K, Noiri E, Nakamura K, Nakajima S, Yahagi N, Morimura N, Chang K, Yamada Y.
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Journal Title
Am J Respir Cell Mol Biol.
Volume: 59
Pages: 45-55
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Pulmonary Transplantation of Human Induced Pluripotent Stem Cell-derived Macrophages Ameliorates Pulmonary Alveolar Proteinosis.2018
Author(s)
Happle C, Lachmann N, Ackermann M, Mirenska A, Göhring G, Thomay K, Mucci A, Hetzel M, Glomb T, Suzuki T, Chalk C, Glage S, Dittrich-Breiholz O, Trapnell B, Moritz T, Hansen G.
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Journal Title
Am J Respir Crit Care Med.
Volume: 198
Pages: 350-360
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Statin as a novel pharmacotherapy of pulmonary alveolar proteinosis.2018
Author(s)
McCarthy C, Lee E, Bridges JP, Sallese A, Suzuki T, Woods JC, Bartholmai BJ, Wang T, Chalk C, Carey BC, Arumugam P, Shima K, Tarling EJ, Trapnell BC.
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Journal Title
Nat Commun.
Volume: 9
Pages: 3127
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] iPSC-Derived Macrophages Effectively Treat Pulmonary Alveolar Proteinosis in Csf2rb-Deficient Mice.2018
Author(s)
Mucci A, Lopez-Rodriguez E, Hetzel M, Liu S, Suzuki T, Happle C, Ackermann M, Kempf H, Hillje R, Kunkiel J, Janosz E, Brennig S, Glage S, Bankstahl JP, Dettmer S, Rodt T, Gohring G, Trapnell B, Hansen G, Trapnell C, Knudsen L, Lachmann N, Moritz T.
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Journal Title
Stem Cell Reports.
Volume: 11
Pages: 696-710
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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