2017 Fiscal Year Research-status Report
スポーツにおける超短潜時状況下での予測能力の診断・処方システムの開発(国際共同研究強化)
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16KK0031
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Research Institution | National Institute of Fitness and Sports in Kanoya |
Principal Investigator |
中本 浩揮 鹿屋体育大学, スポーツ人文・応用社会科学系, 准教授 (10423732)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 知覚 / 予測 / 視線行動 / 知覚トレーニング |
Outline of Annual Research Achievements |
野球やテニスなど,超短潜時の打球運動には,知覚-運動制御の効率化が重要である.これまでの研究では,ボールに対する視線行動や,部分的な環境情報(相手動作やボールの初期軌跡)に基づく予測能力が重要であることが示されてきた. そこで本年度は,野球およびテニスのヴァーチャルリアリティ(VR)を作成し,主にボールに対する視線行動に関する研究を行った.先行研究では,エリート選手と中級者・未熟練者の視線の比較により,優れた打球運動を支えるユニークな視線行動 (例えば,予測的サッカードや頭部追跡方略) が明らかにされてきた.しかし,このような視線行動が打球運動の良否に貢献するかどうかを明確にするためには,個人間比較ではなく,個人内のパフォーマンス変動と視線行動の関係を明らかにする必要がある. まず,プロ野球選手と中級者を対象に,VR下で野球打撃を行わせ,個人内の視線行動とタイミングの変動の関係を検討した.結果,タイミングの変動は,眼や頭の方向と関係があり,特に,頭部の方向がボールに向いていることが重要であることが示された.よって,「ボールから眼を離すな」という一般的な指導とは異なり,頭がボールに向いている(ボールから頭が離れない)ことが優れた打撃に重要となる可能性が示唆された.次に,この結果に基づき,頭部方向がボールに向くように,VR内で視野範囲を制限する視野制限トレーニングをテニス初級者に行わせ,頭部追跡や打球パフォーマンス向上に有益であるか検討した.結果,視野制限下では頭部追跡が改善されたが,トレーニング後に視野制限を除外すると改善効果が消失した.また,予測能力に影響する運動シミュレーション(自己の運動システムで他者の運動を予測する機構)を向上させる方法として,同時模倣運動の効果について検討した.結果,予測能力が低い者では,予測能力の改善が認められた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
打球運動を実験統制下で柔軟に検証可能なVR環境が作成できたこと,これにより,これまでの視線研究では困難であった個人内変動の検討から打球運動に寄与する要因を明らかにできたこと,予測能力に関して,打球運動を用いた検討ではないが,運動シミュレーションが予測に重要であることを行動レベルで示せたこと,より有益な予測能力を向上させる方法を提案できたことから,概ね順調に進んでいると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
VRでは,実環境では不可能な環境を作り出すことができる.最新の研究知見では,このようなVR下でのトレーニングが,実際の練習を超えた効果を持つことが報告されている.そのため,これまでの研究で明らかになった超短潜時下での打球運動に影響する知覚-運動制御要因(頭部追跡,運動シミュレーション,抑制による運動修正)を取り上げ,新たなトレーニング方法を開発し,その効果を検証する.
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