2017 Fiscal Year Research-status Report
政治過程を考慮した景気刺激策としての公共投資の経済効果に関する理論・計量分析(国際共同研究強化)
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16KK0057
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
宮崎 智視 神戸大学, 経済学研究科, 准教授 (20410673)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 公共投資 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,標記課題についていくつかの論文を完成させた.かつ,国際共同研究にも着手した. まず,公共投資が地域の企業活動に与える影響についての研究を完成させた.日本においては,政治的な理由から公共投資が地方に重点的に配分されてきたことを踏まえ,地域別の部門別民間投資データを用いて都道府県レベルにおけるクラウディング・インおよびアウト効果の検証を試みた.分析の結果,運輸・通信や鉱業についてはクラウディング・イン効果が確認された一方,金融・保険業やサービス業についてはクラウディング・アウト効果が確認された.金融・保険業やサービス業は,近年いくつかの研究で経済成長を支える部門であることが知られている.本研究の結果は,政治家が地方活性化を唱えて行ったはずの公共投資が,成長に寄与する部門の投資を阻害したことを示すものであり,長期的には地方経済の低迷にもつながることを示唆するものである.同研究は査読ののち,the Annals of Regional Scienceに掲載された. 次に,公共投資が株価に与える影響について,時系列分析の手法で頻繁に用いられるVector Autoregression model(VARモデル)を用いて検証した.その際,なるべく新しい手法を用いた.具体的には,LA-VAR分析によってグレンジャーの因果関係を検証し,Factor Augmented VARモデルによって株価の変動のうち,公共投資(社会資本)ショックの貢献の程度を定量的に示した.同研究は,査読ののちFinance Research Letters誌に近刊となっている. 最後に,国際共同研究に当たっては,渡航先の大学院生と国土交通省データを用いた研究を行うに際し,データの入手や資料の解釈などで手助けを行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
まず,二本の論文が査読ののち公刊ないしは近刊となった.うちthe Annals of Regional Scienceについては,都市・地域経済学でも古くから知られた雑誌である.このほか,関連研究についてカンファレンスを行ったり,Glazer教授をはじめ滞在先の先生たちとも頻繁に討議の場を持ったりすることで,本課題に止まらず様々な面について知見を得ることができた.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,国際共同研究を完成させることを目指したい.政治過程との関連については,UC Irvineに加え,University of Essexへの滞在も通じて,より考察を深めたいと考えている.
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