2017 Fiscal Year Research-status Report
ソフトマテリアル表面を探査する自律走査型マルチアクティブプローブ法の開発(国際共同研究強化)
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16KK0091
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
角五 彰 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (10374224)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | アクティブプローブ / 微小管 / キネシン / メカノバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
基課題では、自走する多数のアクティブマター(微小管)を用いて、ゲルなどに代表される軟らかい材料(ソフトマテリアル)表面の力学特性変化(歪・応力変化)を探針する『マルチアクティブプローブ』法を開発することを目的としてきた。これまでに、1)独自開発した顕微鏡上力学試験機の作動精度を確認するとともに弾性基盤上で微小管アクティブプローブを長時間駆動させる条件の最適化を終えている。さらに、2)本装置を用いて弾性基盤上の力学的な環境変化が微小管アクティブプローブの動的挙動に及ぼす影響を評価してきた。これらを通して、(1)アクティブプローブである微小管は応力方向や荷重モード(引張や圧縮など)に依存して垂直方向、対角方向あるいは環状に進行方向を変化(偏向運動)させる、(2)微小管の移動速度はソフトマテリアル基盤の伸張歪を増加させると高くなる、さらに、(3)コンピュータシミュレーション実験により微小管の偏向運動は微小管にかかる曲げエネルギーに依存するという知見を見出している。これらの研究成果は、微小管がソフトマテリアル表面の力学特性を評価するアクティブローブとして有用であることを強く支持するものである。本課題では、これまでの工学的な視点を生命科学分野や医学分野にまで広げることで基課題の飛躍的な発展を目的としている。29年度はアクティブプローブとして利用してきた微小管の力学刺激に対する動的挙動を分子レベルで評価することにより、細胞骨格としての役割を担う微小管の力学知覚機構の解明を目指した。具体的には力学刺激に対する微小管の動的持続長および先導端の揺らぎの1分子ナノメトリーおよび高分解能な顕微鏡を用い微小管の力学物性の変調評価を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
提案書に掲げた研究計画通りに進んでいるため。
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Strategy for Future Research Activity |
微小管は、神経細胞活動に必要な信号伝達の導線であるとともに、機能維持に必要な物質輸送にも係っている。30年度は力学刺激に対する微小管の生化学的特性変調機構を明らかにすることで、近年、力学ストレスの影響が指摘されている神経疾患等の病理解明につながる知見を得ることを目的とする。具体的には、顕微鏡上力学試験機を用いて微小管に引張あるいは圧縮応力を印加することで神経細胞疾患に特有の座屈現象や断片化現象を再現するとともに、共同研究先が保有する先進的な解析技術を用いて再構成系の細胞内物質輸送を評価することで、力学的ストレスが生理機能そのものに与える影響を明らかにする予定である。
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