2017 Fiscal Year Research-status Report
三畳紀天体衝突によるグローバル環境変動の解明(国際共同研究強化)
Project/Area Number |
16KK0104
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
尾上 哲治 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 准教授 (60404472)
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Project Period (FY) |
2016 – 2018
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Keywords | 地質学 / 地球化学 / 層位・古生物学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2017年度の国際共同研究では,イタリアパドヴァ大学を拠点に,イタリアの上部三畳系炭酸塩岩を対象とした地球化学および化石層序学的検討を行った.研究試料は,微化石・古地磁気層序により詳しく年代を決定することができる①シチリア島のPizzo Mondelloセクション,②ラゴネグロ地方のPignola-Abriolaセクション,Sasso di Castaldaセクション,Monte Volturinoセクション,③ロンバルディ地方のItalcementi old quarryセクションから採取した. 採取した試料については,研究拠点のパドヴァ大学で酢酸法によるコノドント化石の抽出を行い,属種の同定および堆積年代の決定を進めた.また抽出したコノドント化石については,共同研究者のManuel Rigo博士がオーストラリア国立大学を訪問し,二次イオン質量分析による酸素同位体比測定およびストロンチウム同位体比の分析を行った.これらの研究と並行して,有機炭素同位体比(δ13Corg)および全有機炭素濃度(TOC)の測定を,パドヴァ大学地質科学科設置の元素分析計オンライン質量分析計(Delta Plus Advantage)を用いて行った. 本研究の結果,シチリア島のPizzo Mondelloセクションにおいて,ノーリアン後期に炭素同位体比とストロンチウム同位体比の負の変動がみつかった.同位体比変動のみられる層準は,およそ215.5 Maの年代に相当し,これはカナダのManicouaganクレーターを形成した年代に対比されることが明らかになった.また同様の炭素同位体比およびストロンチウム同位体の変動は,ラゴネグロ地方の石灰岩にも記録されていることが明らかになった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パドヴァ大学M. Rigo博士と緊密に連携し,地層を当初の予定より数多くの地域・地点を現地調査することができた.また堆積物の解析に必要な微化石年代決定はこれまでにない高精度で行い,炭素,硫黄,ストロンチウム同位体,およびコノドントの酸素同位体分析と合わせることで,イジェクタ層が見つかる可能性のある層準を詳しく決定することができた.得られた結果については滞在期間中に論文執筆を共同で行い,シチリア島の調査結果についてはすでにオンライン版として公表されている(Onoue et al., in press).またラゴネグロ地方の調査結果についても現在査読中であり,本国際共同研究の成果は順調に進展していると言える.
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Strategy for Future Research Activity |
前年度までに野外で採取した試料の一部は,日本に郵送し,現在化学分析のための粉末試料の作成を進めている.一部の試料(シチリア島,ラゴネグロ地方の石灰岩)については,すでに分析試料を作成し,地球外物質に豊富に含まれる親鉄元素の定量分析(蛍光X線分析)を進めている.また白金族元素の定量分析による地球外物質の検出を目指した研究についても,一部研究を開始している.選別された試料がイジェクタ層かどうかを判定するため,隕石中に豊富な白金族元素の濃度を調べる必要がある.分析はこれまでの研究と同様に,誘導結合プラズマ質量分析装置(ICP-MS)を用いた白金族元素濃度の定量分析を,千葉工業大学の佐藤峰南博士と共同でおこなう. 2018年度は以上のような化学分析を中心に研究をすすめる.また追加試料が必要な場合は,再びイタリアのセクションを調査し,現地調査を行う予定である.さらにM.RIgo博士と共同でコノドント化石の絶滅記録解読にも取り組みを始めている.特に天体衝突が起こったとされるノーリアン後期において,大きな群衆変化がみられることが明らかになりつつあり,今年度はより詳細な化石記録の解読にも取り組む予定である.
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Research Products
(19 results)