2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
16KT0005
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
中村 仁洋 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 主任研究官 (40359633)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大賀 辰秀 (財)冲中記念成人病研究所, その他部局等, 研究員 (00724022) [Withdrawn]
ディン ティ 京都大学, 医学研究科, 研究員 (30602073)
宇野 彰 筑波大学, 人間系, 教授 (10270688)
樋口 大樹 日本電信電話株式会社NTTコミュニケーション科学基礎研究所, 協創情報研究部, リサーチアソシエイト (50804879) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | 語りと歌唱 / 言語機能と脳 / 加齢 / 認知症 |
Outline of Annual Research Achievements |
機能的退行が起こることが知られている。一方で、蓄積型の語彙・意味記憶や、過去の事象や体験などを自発的に口述する「語り」の能力は、このような加齢性変化が起こりくい。同様に、高齢者や脳損傷患者でも侵されにくい言語関連能力として、慣れ親しんだ歌を口ずさむ際のような「歌唱」の能力が知られている。言葉や歌が個体間の情報伝達手段として、本質的に社会的な性質を持つことを考えれば、「語り」と「歌唱」の脳内機構は、いわゆる言語中枢だけでなく、このような社会性を維持するための神経システムを部分的に共有している可能性がある。本研究はこの問題を検証するため計画され、29年度は、これら語り・歌いの能力に関する認知機能検査を策定し、MRIデータの収集に着手することができた。また、若年成人における脳画像データについては、研究結果の一部をまとめて学術論文として発表した。高齢者を対象としたMRI実験では、60歳代から80代までの健常高齢者を中心に、MRIによる脳構造及び機能画像データを収集することができた。今後は引き続き、若年から高齢期の被験者を追加しながら、加齢に伴って構造的変化の起こりにくい領域の特定、言語・歌唱課題と成績と相関を示す神経構造などについて、画像データ解析を進める予定である。加齢によって衰えにくい「語り」と「歌唱」という2つの言語関連能力の神経基盤を明らかにすることで、知識伝達において高齢者が社会の中で担ってきた積極的な役割に関して、新しい神経生物的知見を提供しつつ、ヒトの言語能力そのものの起源に接近し、また高齢者の認知能力・生活能力維持のための簡便な訓練プログラムとしての語り・歌唱の可能性・有効性を体系的に検証することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究計画は平成28年7月に採択が決定したため、実質的には同年度の後半から着手することとなった。当初の計画では高齢者を対象として脳画像データを収集・検証する予定であったが、平成28年度と30年度に研究代表者の所属機関の異動が生じたため、研究予算の移管に時間を要したほか、研究体制の組み直しや倫理審査のやり直しが必要となり、計画を安定的に実施できない状況が続き、研究計画の遂行に遅れが発生していた。平成30年度は、認知言語機能と歌唱能力に関して策定した行動課題について、70代以降の高齢被験者30名程度を対象に解剖画像・拡散テンソル画像・安静時機能画像を収集し、加齢に伴って構造的変化の起こりにくい領域の特定、言語・歌唱課題と成績と相関を示す神経構造などの検討項目についてデータ解析を進めた。 これまでの画像データの解析では、特に解剖画像上では、両側基底核において言語認知と歌唱機能の間で異なる加齢変化が観察されたため、引き続き被験者集団の年齢幅を拡大してデータ収集を行っているほか、他の機能画像においても検討を進めている。特に、対照群としての若年者では、いまだサンプル数が十分でないため、行動課題と画像に関するデータ収集を引き続き行い、高齢者グループとの比較や、加齢変化の生じにくい脳構造を特定する方向で検討を進めている
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Strategy for Future Research Activity |
上記のような状況で、初年度から研究計画を円滑に推進することが難しい状況が続き、画像データの収集は平成29年度後半になって開始することができた。平成30年度は当初計画では最終年度となっていたが、年度後半からは行動実験や画像データ収集・解析を安定的に行う状況を整備できたため、日本学術振興会に期間延長を申請して承認を得た。このため、今後の1年間では、行動指標およびMRI画像データの追加収集を進めることとし、特に若年者でのデータを補充することで、統計的検出力を強化していきたいと考えている。データ解析では、進捗状況で述べたような解剖雅楽的な変化だけでなく、安静時機能画像と行動指標の相関を中心に、より機能的な側面についての評価を行っている予定である。また、研究期間の最終段階でもあることから、成果を取りまとめるため、関連学会における研究結果の発表と論文作成の準備も進める。会における研究結果の発表と論文作成に向けた準備にも着手していきたい。
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Causes of Carryover |
上記の事情により、平成27年度から脳機能画像データ収集を速やかに進めることができなかったことや、研究代表者と分担者の所属機関変更や交代に伴って、予算移管や倫理審査のため研究関連の予算執行ができない期間が続き、予定していた検査補助員や研究参加者への謝金関連の予算が未執行となっていた。29年度からは、連携する研究機関における画像データ収集をはじめとする研究体制が整い、前年度までの大きな遅滞は解消してきたが、前年度からの未使用額を全額支出するには至らなかった。現在は、代表者の所属機関におけるデータ収集体制や検査補助員も確保できたため、上記の謝金関連予算を執行することで、効率的に研究計画を実施できる。
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Research Products
(3 results)