2017 Fiscal Year Research-status Report
福祉レジームと移民レジームの交差:外国人介護従事者が及ぼす影響
Project/Area Number |
16KT0008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
安里 和晃 京都大学, 文学研究科, 特定准教授 (00465957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
結城 康博 淑徳大学, 総合福祉学部, 教授 (10458622)
明石 純一 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (30400617)
辻本 登志子 青山学院女子短期大学, その他部局等, 助教 (50749851)
大崎 千秋 名古屋柳城短期大学, その他部局等, 准教授(移行) (80310598)
太田 貞司 京都女子大学, 家政学部, 教授 (90223833)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | ケア / 高齢者 / 移住労働 / 技能実習 / 経済連携協定 / 留学 / 地域福祉 / 介護 |
Outline of Annual Research Achievements |
2008年に経済連携協定に基づいた外国人介護福祉士候補者の受け入れが始まったが、厚生労働省は海外人材を労働力確保の手段としては用いてこなかった。そもそも入国管理政策上、労働力の受け入れ手段として明確に位置付けた介護の在留資格は存在しなかった。ところが2016~17年度にかけて、日本再興戦略に基づき、特区制度化を通じた家事労働者の受け入れが開始された。また、日本国内大学の福祉学部を卒業しても介護分野で働けなかった外国人介護福祉士が、在留資格「介護」が創設されたことにより長期的な滞在が可能となった。さらに技能移転の手段としての技能実習が、過去20年余りの方針を転換し、労働力確保の手段として位置づけられた。 こうした重大な局面において、経済連携協定による受入の総括、介護に従事する留学生に関する調査、技能実習についての資料収集を実施した。明らかとなったのは、経済連携協定下の外国人介護従事者に対する高い評価である。そのことが、他の受け入れ枠組みに対する高い期待を形成している。ただし調査を通じて留学生の借金漬けの実態や、送り出し国における不適切な斡旋・教育態勢も確認された。 介護を巡る人の移動においては、経済連携協定、留学、技能実習、難民認定など様々なチャネルが存在し、複雑な移動枠組みが形成され、人権が担保されていない。 成果発信の機会としては、国際会議を企画・実施した。1つは、京都大学安里研究室が主催したシンポジウム「EPA10年を振り返る」(11月18日開催)である。また前・台湾衛生福利部副大臣らを招聘して、京都大学文学研究科安里研究室・日本介護福祉士会共催でシンポジウム「高齢者ケアはどう変わってきたか:台湾とドイツに見る制度と人材育成」を11月26日に開催した。それ以外にも、日本ホームヘルパー協会、認知症ケア学会、日本政府・ベトナム政府などが主催の会議において招聘講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査の実施だけではなく、調査結果の発信という点において十分な進展があったといえる。ただし、今年度は出入国管理政策上大きな変化があった。例えば、技能実習制度については新法の制定に加え、今年度より受け入れが本格化する在留資格介護(留学生)もそうである。そのため実態を明らかにするためには、今後の調査がより重要であるといえる。いずれにせよ制度の変革期に当たり、より実態調査を進める必要があり、調査への比重を置いて最終年度も進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度が最後の年度ということもあり、調査としては補足調査という位置づけとなるが、今年度より受け入れが本格化する技能実習制度については、今年度の調査が重要となるため、在留資格「介護」を含め、本調査を継続する。特に実態については分からない点が多いため、積極的にすすめたい。また、調査結果をメンバー全員で統合し、成果の発信、成果公開にむけ準備を進める。また、研究開始当初より計画をしていた、まとめとしての、出版計画を具体化したいと考えている。
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Causes of Carryover |
研究代表者については、春季の調査が大学の業務の事情により十分遂行できなかったことがある。他方、今後の調査計画で述べた通り、制度変化期にあるため、来年度に調査を移行することで、より有効な調査が可能であると考えられる。来年度は予定以上に実態調査に力を入れ、成果報告においては、具体的な状況を含め、学術に昇華させたいと考えている。
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Research Products
(38 results)