2017 Fiscal Year Research-status Report
認知症談話における多様性と患者のQOL向上に向けた統合コミュニケーション研究
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16KT0010
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Research Institution | Fukuoka Prefectural University |
Principal Investigator |
網野 薫菊 福岡県立大学, 公私立大学の部局等, 研究員 (80757906)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
豊田 謙二 熊本学園大学, 社会福祉学部, 教授 (60244802) [Withdrawn]
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 複文節 / 間主観性 / 心理動詞 / 社会方略 / 診察室での会話 / モダリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度においてはデータ収集とスクリプト化を基礎として、認知症患者と介護者の会話を一種の制度的会話としてのパターン解明を目指した。その結果、次のような成果を得た。 まず、複文の使用種類については、発話中の複文(接続節)において、その使用実体についてVerilogue Inc.から譲渡された診察室におけるPT(患者),CG(介護者),DR(医者)の三者別に抽出した。その結果、第二言語習得では容易とされる入門~初級に属する項目(逆接節、原因理由節、時間節、一般的事実)は比較的PTにも多く見られるが、付帯状況や並列、反事実条件、一般的因果に関する条件節など学習程度が進んで導入されるものはPTの使用があまり見られないことが分かった。 また認知症談話における複文中の複雑性;また複文中の複雑性については、文節が多いほど複雑性が高いとの仮説により従属節における文節数を基準とした。 その結果、DRのほうがPTより1従属節内の文節数が全体として多いことはうかがえた。 さらに間主観性と代理性;言語学分野における”Interubjectivity”、つまり個々の主観を摺合せ、合意形成を行っていく過程であるが、この間主観性について認知症が描かれた小説、また実際の診察室でのデータを対象にして分析を行った。その結果、双方のデータにおいては評価・判断者・他参加者としての患者を取り巻く人間が、間違った発話意図の構築(あるいは推測)を行い、患者本人より介護者のほうが「患者の真実」を代弁する権利を得ていること、そして患者の行動の解釈も介護者の認識の範囲内で処理されることが分かった。また介護者が患者の心理状況や感覚・思考を代弁する「心理動詞」を、スタンス客観化のためのモダリティなしに使用していることも分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度におけるデータの収集については、組織的かつ物理的な困難さがあったが、本年度においてデータがある程度文書化された後は、当初計画していたように質的分析・量的分析に従うことに集中するのみであった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き、個人にて成果発表を行う。さらに個人のみならず介護研究や言語研究の学際的研究会を開き、今後の介護言語学分野の発展に寄与したいとも考えている。 その際には言語学を専攻する若手に頼ることにより、各年代の研究者を繋ぎ、介護言語学を活性化する循環を作っていきたい。
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Causes of Carryover |
コーパス化したデータのオープンアクセスシステムの構築、またテキストマインニングやアルゴリズム確定等の情報技術分野との協力が必要な部分において、関連事業者や研究機関におけるステークホルダーとの関係性構築にある種の困難さがあった(異分野業種のため)。 そのため、前年度・当該年度における情報技術システム構築関連の経費が未使用となった。
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Research Products
(3 results)