2017 Fiscal Year Research-status Report
環境因子によるミトコンドリア機能変化を介する新しい老化モデル
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16KT0013
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Research Institution | Okazaki Research Facilities, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
西田 基宏 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(岡崎共通研究施設), 岡崎統合バイオサイエンスセンター, 教授 (90342641)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 重元 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (00325333)
赤池 孝章 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20231798)
本橋 ほづみ 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (00282351)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 活性イオウ / ミトコンドリア / 老化 / 親電子 |
Outline of Annual Research Achievements |
環境親電子物質(有機水銀)による心疾患リスク増悪のメカニズム解析を行った。神経障害を誘発しない低用量のMeHgを含ませた飲料水を1週間摂取させたマウスの心臓ではミトコンドリアが有意に分裂していることが明らかになった。ミトコンドリア分裂促進GTP結合タンパク質dynamin-related protein 1 (Drp1)の活性も有意に上昇しており、その機序としてC末端に存在するシステインSH基の脱イオウ化が関与することを新たに見出した。すなわち、内因性Drp1タンパク質をはじめとする親電子感受性のタンパク質システインSH基の多くが翻訳時にポリイオウ化されていること、環境親電子物質曝露によりシステインポリイオウ鎖からイオウが引き抜かれることでDrp1活性が増加し、ミトコンドリア品質管理異常が生じることで心筋のストレス抵抗性が減弱する可能性を示した。一方、分担者の赤池らはタンパク質システインパースルフィド(CysSSH)の産生酵素がミトコンドリアtRNA合成酵素(CARS2)であることも明らかにした。CARS2はシステインを基質にCysSSHを生成するユニークな活性を持つこと、CysSSHが翻訳時にタンパク質に取り込まれることでタンパク質ポリイオウ鎖が出来てくることを明らかにした。CARS2欠損細胞において、Drp1のポリイオウ鎖量は有意に減弱し、それによりDrp1のGTP結合活性も有意に増加することが明らかとなった。GTP結合タンパク質はこれまで、グアニンヌクレオチド交換因子(GEF)やGTPase促進タンパク質(GAP)によってのみ制御されると信じられてきたが、本研究により、Cysのポリイオウ鎖の長さによってDrp1の活性が厳密に制御されるという全く新しい概念が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
活性イオウの生成酵素を同定し、その遺伝子改変マウスの作出も終え、個体解析まで進んでいる。環境親電子物質(MeHg)曝露による心疾患リスク増加機構の論文も投稿直前の準備段階にあり、着実に成果にまとまりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
ストレス誘発性の心筋早期老化モデルで得られた知見が個体レベルの加齢に伴って生じる老化にも当てはまるかどうか検証していく。MeHg曝露モデルで得られた知見が普遍性をもつ機構かどうか確認するため、タバコ主流煙曝露モデルマウスの心臓形態・心機能を測定するとともに、仔マウスのストレス抵抗能力の解析も行うことで、環境ストレスによる健康リスクが世代を越えて継承されうるかどうか、そのメカニズムも含めて解析する。
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Causes of Carryover |
平成29年度の大幅な研究進展により、ミトコンドリアtRNA合成酵素CARS2が生体内で求核性の高い活性イオウ種(システインパースルフィドやシステインポリスルフィド)を生成することで、心筋細胞老化に関わる内因性親電子物質8-nitro-cGMPの代謝・解毒に関わることを明らかにした(Nature Commun,2017)。 この知見を踏まえて、CARS2欠損マウスおよびCARS2過剰発現マウスを作出し、個体レベルでの解析する必要が新たに生じた。平成29年度、CRISPR/Cas9システムを用いたCARS2欠損マウスの作出には成功したものの、マウス搬入時のクリーンアップに時間を要した。そのため、マウスクリーンアップならびに飼育管理維持・個体レベルの心循環機能解析や組織の形態構造解析に必要と予想される経費を平成30年度に繰り越した。
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Research Products
(27 results)