2016 Fiscal Year Research-status Report
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16KT0043
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
山崎 幸治 神戸大学, 社会システムイノベーションセンター, 教授 (30319818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 高弘 神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (20547054)
島村 靖治 神戸大学, 国際協力研究科, 准教授 (50541637)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2020-03-31
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Keywords | スリランカ / 貧困 / 紛争 / ソーシャル・キャピタル |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は基本的な文献収集とデータ収集を中心に行った。2017年2月には研究代表者および分担者の計3名による10日間の現地調査を実施した。まずコロンボにおいて、基礎データとして2011年国勢調査データおよび2012年度家計所得消費支出調査のデータを入手した。さらに現地共同研究者と打ち合わせを行い、共同で北部の紛争地域を訪問し、聞き取り調査を実施した。現地では、県知事から家計調査の許可をもらうとともに、紛争の影響に関する基本的な情報を得ることができた。とりわけ反政府勢力による占領が20年以上前に解消したにもかかわらず、まだ多くの難民キャンプが存在することが分かった。そこでジャフナ大学の教員の協力を得て、難民キャンプを訪問し、難民差別とカースト差別が密接に絡み合っていることが新たに分かった。さらに元反政府勢力のメンバーの協力を得て、反政府勢力の拠点であったキリノッチで再定住村、障碍者団体や孤児院などを訪問するとともに、最後の激戦地であるムラティブでは元政府組織の代表者から話を聞くことができた。そこで今後の家計調査対象として、難民キャンプおよびキャンプから再定住した人々、そして激戦地における影響を中心とした家計調査を実施することが有益であることを認識した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の現地調査では、紛争の影響に関する実態を把握することができたと同時に、未だに難民キャンプに居住する人々が多く存在し、彼ら、彼女らの境遇について、認識を新たにすることができた。とりわけ寡婦や障碍者における支援の重要性と、タミル社会におけるカースト差別と紛争被害の重層構造について、解明する必要性を理解することができた。今後の課題としては、現地における共同研究者とともに、家計調査の実施体制を構築することと、さらなる既存データの収集をすることである。初年度の成果として、今後の調査の見通しを立てることができ、有益な聞き取り調査を実施することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、様々な研究視点を整理した上で、具体的な家計調査の質問票の作成と、現地における家計調査の実施体制の確立を進めていく予定である。遂行上の課題としては、中所得国であるスリランカにおいて、調査員および監督者の費用が予想以上にかかることが分かり、上手く予算に組み込んでいく方策を考える必要がある。
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Causes of Carryover |
中所得国であるスリランカにおいて、調査員および監督者の費用が予想以上にかかることが分かり、家計調査に多くの支出を振り分ける必要が明らかになったため、家計調査費用に振り向けるために初年度予算のほぼ半額を繰り越すことにした。そうすることで、より多くの調査員を雇用し、多くの家計を対象とした調査を実施することで、現地の紛争地域における代表性を確保した調査を実施することができる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2017年度には、現地での家計調査実施体制を構築した後、パイロットサーベイを実施する予定である。そして2018年度には本調査を実施する。これらの調査費用として、次年度使用額を利用する予定である。
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Research Products
(1 results)