2016 Fiscal Year Research-status Report
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16KT0049
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
生駒 忠昭 新潟大学, 自然科学系, 教授 (10212804)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
長谷川 英悦 新潟大学, 自然科学系, 教授 (60201711)
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Project Period (FY) |
2016-07-19 – 2019-03-31
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Keywords | 遷移状態 / 活性錯合体 / 三重項融合 / 逆項間交差 / 遅延蛍光 / 磁気発光効果 / スピン角運動量保存 / スピンダイナミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
1.Platinum octaethyl-porphyrin(PtOEP)を用いた三重項増感法を利用して溶液中における9,10-Diphenylanthracene (DPA)の遅延蛍光に対する磁場効果を研究した。磁場効果は三重項融合(TF)の遷移状態である三重項-三重項(TT)対のダイナミクスを調べることが出来る有力な実験手法である。幅広い粘度領域を網羅した一連のグリコールエーテル系溶媒を用いて、TF反応の研究を行った。TT対のスピン統計だけなくスピン動力学がTF効率に大きな影響を与えており、三重項(T1)分子の回転運動がスピン動力学にとって重要な働きをしていることが明らかにした。また、回転拡散・スピン動力学ならびにTF効率の定量的関係を解明するため、三重項増感によるTFの速度論的シミュレーションを行い、遷移状態ダイナミクスについて考察した。
2.逆項間交差に関する研究に関しては、熱活性型の項間交差の機構を解明するために必要な温度可変の時間分解電子スピン共鳴(ESR)実験装置を立ち上げた。実験装置の立ち上げにおいては、トルエン溶液中のフラーレンC60を標準試料に用いた。300~90 Kまでの温度領域で、C60のT1状態のESRスペクトルとその時間変化を観測することに成功した。得られた結果と既報論文の比較より、立ち上げた設備を用いてT1状態の正しいデータを取得できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
三重項融合反応に関する研究は予定通りに進み、回転運動の影響を明らかにすることができた。一方、逆項間交差に関する研究に関しては、試料温度を制御する装置を立ち上げたが、予定通りには進まなかった。理由は、新規購入した設備を現有するクライオスタットに連動させる際、想定外の不具合があったため、使用可能な状態を見出すために時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
三重項融合反応の研究に関しては、密度行列演算子法による磁気発光効果の理論計算を行い、実験結果との比較より遷移状態ダイナミクスを明らかにする。一方、逆項間交差の研究に関しては、ベンズイミダゾール塩およびホスフォールの時間分解電子スピン共鳴実験を行い、スピン副準位動力学を明らかにする。
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Causes of Carryover |
現有するクラオスタットを修理して再利用することによって、予定であったESR用温度制御装置の一部を購入する必要がなくなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
三重項ハーベスト研究に必要な光学実験用クライオスタットの修理ならびに真空蒸着装置の改造の費用として用いる。
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Research Products
(19 results)